内臓を温めることで消化吸収能力アップを
空調と同時に飲食についても見直したい。暑いと冷たくてあっさりしたものが欲しくなるが、これも夏バテを引き起こす一つの要因。特によくないのが、食事の際に冷たい水などを大量に摂取すること。胃酸が薄まり、内臓の消化吸収機能の低下につながってしまうのだ。
「どんなに暑いからといっても、私たちが氷水に浸かるようなことはまずありませんよね? 氷水に手を付けていると、徐々に感覚がなくなってくるのはご存じだと思います。そのような過酷な状況に、内臓は1日に何度もさらされているのです」
その結果、食欲不振が悪化し、さらに冷たくてあっさりしたものを欲するようになる。夏バテの人をより苦しめるこの負のスパイラルには注意したい。
「夏に冷たいものが欲しくなったら、それは夏バテの危険シグナルです。負のスパイラルに陥らないためにも、普段からなるべく温かいものを口にするように心がけてください」
ただし、温かいといっても、油の多い食べ物は控えたい。消化が悪く、胃腸に負担がかかるからだ。
「夏バテの人には、そうめんを温かいつゆでいただく“にゅうめん”などがおすすめです。どうしても食欲が出ない人は、朝一番に白湯を一杯飲んでみてください。それにショウガをすりおろして加えればなお良し。内臓を温めることで、食欲不振からくる夏バテを撃退しましょう」
生薬を上手に取り入れ夏バテに負けない体を
ここまで夏バテ発症の原因となる生活習慣や対処法などを見てきたが、実はそのメカニズム、つまり体内で何が起きているかに関しては科学的に解明されていない部分も多い。
「例えば、夏バテの人が血液検査をしたとしても、ほかに疾患などを抱えていない限り、数値は正常値になります。こうなると西洋医学ではなかなか対処が難しい。それでも夏バテの諸症状に悩まされている人は確実に存在します。こうした領域を得意とするのが東洋医学なのです」
さまざまな複合的症状を伴う夏バテには、東洋医学で使われている漢方や生薬がうってつけだ。一種類でも多くの効能を併せ持つ生薬だが、混ぜ合わせることで相乗効果も期待できる。
「西洋医学ではビタミン剤を与えることしかできないような症状や人に対しても、東洋医学では状況やタイプに合わせたさまざまな対応が可能です。“自律神経を整える”や“内臓を温める”など、夏バテに有効な効能を持つ生薬も数多く存在します。体質改善など根本的な解決に導く生薬を日々の生活に取り入れることが、より精力的に夏を乗り越えるための切り札の一つとなるでしょう」
ビジネスパーソンにとって、毎日の活力が奪われる夏バテは死活問題。回避するためには、正しい知識を蓄えることが大切だ。久住先生が教えてくれたのは、いずれも明日から実践できる対処法。まずはできることから始めてみてはどうだろうか。