地域のエネルギーのシーズとニーズを見極める

中本成美●なかもと・なるみ
北九州市 環境局
環境未来都市推進部長

1983年北九州市役所入職。企画政策関連の部署に長く在籍し、市の長期構想、特区構想などの立案に携わる。2014年4月より現職。「北九州市地域エネルギー拠点化推進事業」を進める。

安定・安価なエネルギーの供給と、その賢い消費を目指す「北九州市地域エネルギー拠点化推進事業」。北九州パワー設立の土台でもあるこの事業のきっかけとなったのは、東日本大震災だったという。北九州市環境未来都市推進部長の中本成美氏はこう話す。

「市民生活、産業活動を支えるエネルギーについて、市としても一定の責任を持つべき。震災を契機にそうした考えが再認識されました。もともと北九州市は、さまざまなエネルギー資源を有し、拠点の形成に適したエリア。地域のポテンシャルを生かすことは、今後の市の発展にもつながります」

中本部長の言う北九州市のポテンシャル。その第一は、響灘地区におけるエネルギー関連施設の集積だろう。すでに多様な自然エネルギーの発電施設が立地し、石油、石炭、天然ガスの備蓄・輸入基地も備える同地区では、洋上風力発電やその関連産業、さらに高効率火力発電産業などを積極的に誘致。エネルギーを“つくる”機能をいっそう充実させていく計画だ。

「そしてもう一方で、私たちはエネルギーを賢く“つかう”ことに関しても実績を持っています。八幡東区東田地区で2010年から5年間にわたって実施した『北九州スマートコミュニティ創造事業』。ここで得た知見やデータは、今後のまちづくりで大きな意味を持ってくるはず。市内の『城野ゼロ・カーボン先進街区』をはじめ、国内外でその成果を生かす取り組みが始まっています」(中本部長)

国の実証プロジェクトに選ばれた「北九州スマートコミュニティ創造事業」では、電力需要が高まる時間帯の電気料金を最大10倍にするダイナミックプライシングを導入。夏場の電力使用において約20%のピークカットを実現した。また、工場で発生する水素をパイプラインで住居や商業施設、公共施設に供給し、エネルギーとして活用する世界初の「水素タウン」の構築などにも取り組んだ。

北九州スマートコミュニティ創造事業で、電力需給をコントロールした「地域節電所」。家庭や企業のエネルギー需要のデータを収集し、発電および蓄電の各種設備を制御した。

「多彩な実証事業は、おかげさまで国内外から高い評価をいただきました。やはり今後のテーマは、成果の活用です。エネルギーをつくる産業と、それを支えるものづくり産業の振興を図り、世界をリードするビジネス環境をつくりながら、地域全体で確かなエネルギーマネジメントを実現していく。これを既存のものづくり産業振興や地域創生につなげたいと考えています」

エネルギーを一つの手段として有効に活用し、都市づくりを推進する北九州市。その独自の取り組みは、世界の主要国の閣僚が訪れるG7北九州エネルギー大臣会合でも関心を集めるに違いない。ではそこで、北九州市としては何を伝えたいのか──。最後に中本部長は次のように語る。

「エネルギー問題が世界で深刻化するなか、“地域”という視点の重要性を伝えたいと考えています。街や都市のレベルでエネルギーのニーズとシーズを細かく見極め、それを上手に結び付けていく。今後は、そうした動きがいっそう求められるでしょう。北九州市の取り組みは、まさにその先行事例。私たちの施策や事業が、他の地域のエネルギー政策のヒントになればうれしく思います」

世界が注目!

2016年5月1日(日)、2日(月)に
G7北九州エネルギー大臣会合が開催されます

伊勢志摩サミット(5月26日、27日)にあわせて全国で開催される10の閣僚会合の一つ。主要国のエネルギー担当大臣が一堂に会し、国際社会の重要な課題であるエネルギー問題について議論します。

●参加国および団体
G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)、EU、IEA(国際エネルギー機関)など
●会場 リーガロイヤルホテル小倉(予定)