全国で進む都市再開発やまちづくり。近年、それを側面的に支援しているものに“特区”がある。日本における特区制度の始まりは、2002年の「構造改革特区」だ。実情に合わない国の規制を地域限定で緩和するこの制度を利用して、これまで実に1200を超える特区が全国で誕生している(2015年11月現在)。


内閣府資料より作成。特区の内容はこれに限定されるものではない。

その後、「国際戦略総合特区」「地域活性化総合特区」が整備され、現在国が注力しているのが、「国家戦略特区」だ。これまでは、まず地域がアイデアを出し、それを国が認める流れだったが、国家戦略特区では“国が自ら主導して”大胆な規制改革を実現していく形となった。

例えば東京では、「世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり」が進行中だ。まさにその名のとおりの再開発で、例えば多国籍企業の法人税の軽減、英語での法人設立申請書の受理などが実施されている(要件あり)。

一方、各所で着工、竣工が続くオフィスビル等の建設にも、この特区制度がプラスの影響をもたらしている。具体的には、土地利用規制の緩和だ。都心部で、外国人も利用できるサービスアパートメントやレジデンス、医療施設等を整備する開発プロジェクトに対して、容積率の緩和(例えば、1.5倍程度に拡大など)が認められているのである。すでに丸の内、大手町、日本橋、銀座などで多数のプロジェクトがこの措置を使い、希少な土地を有効活用。国内外の企業に、オフィススペースの拡大というメリットを提供している。

防災機能を備えBCPに対応するビル

都市部の高層ビル開発について言えば、もう一つ、ここ数年の注目点として「BCP対応」がある。災害時などにも事業継続を求める企業の声に応え、各種の防災機能を備えたビルが増えているのだ。

実際、スイスの保険会社が、世界の616の大都市の自然災害リスクをベンチマークした結果(※)、労働損失日数指数で上位3位までにランクされたのはいずれも日本の都市圏。「東京─横浜」「大阪─神戸」「名古屋」だった。日本に拠点を置く企業にとって、深刻な被災は単なる可能性の問題ではなく、極めて現実的な課題といえる。

なかでも関心度が高い防災機能はやはり地震対策である。柱や壁の強度を上げる「耐震」、建物にダンパーなどを組み込んで揺れを吸収する「制震」に加え、最近では「免震」技術の普及が拡大している。ゴム素材やダンパーなどによる免震層を設置。いわば地面と建物を分離することで揺れそのものを伝えない仕組みだ。地震国・日本において、すでに大正時代には免震構法の特許が出願されており、その技術は現在も世界トップクラス。企業のBCPの実効性を高める大事な要素となっている。

制度や技術を支えにして、各地で進む都市再開発。それぞれに独自の個性や特徴を有しながら、俯瞰してみれば、それらは社会のニーズや動きを確実に反映している。新たに誕生したオフィスビルや商業施設が、時代の要請にいったいどう応えているのか──。個々のプロジェクトをそうした視点から眺めてみるのも興味深いだろう。

※スイス・リーのレポートより。自然災害は、洪水、嵐、高潮、地震、津波などによるもの。