今、オフィスワークのあり方が変わろうとしている。例えば、「デスク」を見直すことによって、「健康経営」の強化を図る──。そんな企業が増えている。
「座り続けない」のが
世界のスタンダード
海外では常識となりつつある「座り過ぎ」の健康リスク──。肥満、体重増加、糖尿病、がん、心臓の冠動脈疾患は、座位時間の長さと正の相関関係をもつという研究結果が多い(※1)。たとえ習慣的に運動していても、座位時間が長ければ死亡リスクは高まることも分かっている(※2)。つまり健康のためには、実は運動よりも座位時間を減らすことが先決だというのだ。
では、日本人の実態はどうなのか。岡村製作所(以下、オカムラ)・ソリューション戦略部の武田浩二氏が驚きのデータを明かす。
「当社が全国で20~60代のオフィスワーカー1200名を調査したところ、デスクワークを『いつも座って行っている』、つまり座りっぱなしという方々が、なんと68.9%にものぼったのです」
北欧諸国では、座り過ぎを改善する上で最も効果的なアイテムとして、立つ、座る、それぞれの作業に合わせて高さを自由に変えることのできる上下昇降デスクが急速に普及。近年、デンマークとスウェーデンでは、新しく導入されるデスクのうち、9割以上が上下昇降デスクになっている。
「そこで当社は、コントロールパネルの操作で天板の高さをスピーディーに変えられる上下昇降デスク“Swift(スイフト)”を今年1月に発売。導入企業様は着々と増えています」
先駆的に導入した企業の一つが、マニュライフ生命である。
社員の健康と幸せが
さらなる成功へ導く
マニュライフ生命は、1887年にカナダで創業したマニュライフ・グループの一員で、1999年に日本での生命保険事業を開始した。
同社代表執行役社長兼CEOのギャビン・ロビンソン氏は、健康経営に対する考え方を次のように述べる。
「人的資源への投資、なかでも健康への投資を重視し、社員の価値を最大限に生かすよう努めています。どんな業種でも人的資源こそ成功の礎。保険会社のようなサービス業ではそれが顕著です。私自身は、彼らが健康で幸せであるほど仕事へのモチベーションも高まり、さらなる事業の成功をもたらしてくれると信じています」
こうした考え方を背景にマニュライフ生命は今春、オフィスや社員の働き方の改革を実行。まず働く場を東京オペラシティ(新宿区)に移し、交通の利便性が高く、自然光がふんだんに差し込む明るい空間を確保した。また、在宅勤務などの制度も積極的に導入している。
「社員を惹きつける先進性と魅力を備え、社内のコラボレーションも促進される。そんなオフィスづくりを目指しました。もちろん健康増進の効果も意識し、改革の一環として導入したのが、上下昇降デスクというわけです」
オフィスワーカーが、長時間、自身の仕事と向き合う場であるデスク。ロビンソン氏は「改革には多くの要素を盛り込みましたが、Swiftは目に見えるかたちで、従来との違いを示してくれます」と満足そうだ。
※1 Thorp AA, et al. Sedentary behaviors and subsequent health outcomes in adluts a systematic reviewof longitudinal studies,1996‐2011. Am J Prev Med. Aug 2011;41(2):207‐215.
※2 Van der Ploeg HP,Chey T,Korda RJ, et al.Sitting time and all‐cause mortality risk in 222,497 Australian adults. Arch Intern Med 2012;172:494‐500.