使い勝手が良く、メリットの大きい新商品も次々に登場している太陽光発電市場。現在の状況や選ぶ際のポイントなどについて、NPO法人 太陽光発電所ネットワークの代表理事、都筑 建氏に聞いた。

「量から質へ」
視点の転換を

──都筑さんは、すでに1990年代から本格的に、太陽光発電の普及活動を進められています。この間の市場や市民の変化について、どう思われますか。

【都筑】やはり3.11とそれに伴う原発の問題は、一般の方たちの意識を劇的に変える契機となりました。太陽光発電も、ある意味では社会の常識になったように感じます。経済面が許せば、自宅に太陽光発電を設置するのは当たり前。そんな感覚も広がっています。

一方で国も、電力の自由化を具体的に進めており、エネルギーを取り巻く状況は刻々と変化しています。そうしたなかで、今後重要なのは「量から質へ」という視点の転換でしょう。

──太陽光発電の“質”を重視するというのは、どういうことでしょうか。

【都筑】かつて世界一の太陽光発電大国でありながら、その後ドイツなどに抜かれた日本では、「もう一度、世界一を目指そう」という議論がよくされます。そうした目標自体は悪くありませんが、実際問題として、今後中国などで普及が加速すれば、単純に導入量で勝負をしてもかなわないでしょう。

そこで一つ大事にしたいのは、例えば住宅数あたりの設置数など、普及率です。単に量を追うのでなく、市民が太陽光発電をより身近に感じられる状況をつくり、その価値をしっかりと生かしていく──。こうした方向性を追求することで、日本の太陽光発電の質はいっそう高められるでしょう。

もちろん個々の太陽光発電についても、付けたら付けっぱなしというのではなく、適切なメンテナンスが求められます。かつて太陽光発電はメンテナンスフリーともいわれましたが、現実にはパネルやシステムをきちんと手入れするか、しないかで、発電量には差が出ます。これも、質の維持、向上を支える大切な要素です。

意外と知られていませんが、日本は太陽光発電の総普及量に占める個人住宅設置の割合が抜群に高い国。固定価格買取制度の導入で、メガソーラーも増えていますが、個人住宅への設置数は断然世界一です。そうしたわが国が、発電の質に目を向け、そのノウハウを蓄積、発信していくことは、他国にとっても意味のあることだと思います。

事業者や製品選びの
ポイントはどこに

──具体的に、現在太陽光発電の設置を考えている人は、どのようなことに気を配るべきでしょうか。

【都筑】それが何十年も使うものであることは、あらためて意識すべきでしょう。いざ設置となれば、10万円でも5万円でも安く購入したいという気持ちになりますが、確かなシステムを手に入れるには、相応の対価を支払わなければなりません。

また最近は、インターネットで簡単に相見積もりが取れるなど、便利なサービスもありますが、立地条件や屋根の形、種類などによっても、適切なシステムは異なりますから、実際家に来てもらっての調査は重要です。そのときの担当者の姿勢や質問への受け答えでも、事業者の良しあしはある程度判断できるでしょう。

業者さん選びについては、地元に根づいてどれだけ継続的に事業活動をしているかも一つのポイントになります。なかには、一定期間たつと拠点を次々と移してしまうような会社も存在しますから注意しなければなりません。

──ユーザー側も、ある程度勉強しなければいけませんね。

【都筑】技術的なことを細部まで理解するのは大変ですが、「業者さんに丸投げ」はいけません。例えば太陽光発電システムのなかには、直流を交流に変換するパワーコンディショナーという装置があります。家庭用でも、産業用でも、一枚一枚のパネルで発電した電気は、必ずこのパワコンを通りますから、その変換効率はとても重要なのですが、これを意識する人は案外少ないですね。さらに言えば、最高変換効率が同じ数値でも、立ち上がりがいい製品、悪い製品があります。こうした知識や情報を持っているだけで、具体的な発電量は変わってきます。