資産運用の王道で
有事にも資産を守る

──先行きが不透明な状況にあって、老後資金をつくる資産運用に臨む方針を教えてください。
井戸美枝●いど・みえ
経済エッセイスト
ファイナンシャルプランナー

神戸生まれ。関西大学社会学部卒業。 ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士として、お金に関する相談や講演、執筆活動を積極的に行う。複雑なお金にかかわる動きをやさしく読み解く経済エッセイストとして活動中。2013年から社会保障審議会企業年金部会の委員。『30代・40代から考える年金の本』(東洋経済新報社)など著書多数。

【井戸】ITなど、時代ごとに儲かるテーマが話題になりますが、こと資産運用に関しては、こうした短期的な流行に惑わされるべきではありません。まずは、こつこつ地道な長期分散投資を実践していきましょう。普段からお金を動かすことを経験していれば、有事にも資産を守るために何をすべきかが分かります。

これは災害対策と同じです。経験があれば、危機が起きたとき、自分がどのように動けば良いのか、とっさに判断できます。たくさんの本を読んで知識を身に付けても、実際の経験がなければ、行動には移せないでしょう。これから投資を始める方であれば、できるだけ早く行動を始め、経験を積んでおくことが大切です。

──実際にはどのような投資を行えばよいのでしょうか。

【井戸】資産運用の王道は、分散投資です。代表的な資産には債券と株式が挙げられます。これを国内と外国に分けて、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式という4資産に分散投資をする のが基本です。各資産の値動きに連動するインデックスファンドは、値動きがわかりやすいという特長があります。さらに、購入した後は、資産の割合を保つための定期的なリバランスも必要になります。とはいえ、忙しい現役世代がこまめなメンテナンスを実践するのはなかなか難しいもの。投資資産の検討や維持管理の手間の負担が大きいなら、バランスファンドを利用する方法もあります。

さらに余裕資金があって、利回りを追求したいのであれば、不動産や金へのサテライトとして投資という選択肢があります。

──不動産投資を含めたサテライト投資を行う際のポイントは何でしょう。

【井戸】不動産は、株式などと異なる値動きをする傾向があるため、リスク分散の一環にもなりますが、まとまったお金を必要とする場合が多いため、信頼のおける会社選びを心がけましょう。

例えばワンルームマンション経営であれば、諸経費などを差し引いた実質的な利回りや立地の将来性、入居者の維持管理などを、きちんと確認することが大切です。実際に現地に足を運ぶことも、実践してほしいですね。自分が住んでみたくなるような良い物件かを確かめ、納得したうえで選ぶように心がけてください。

REIT(不動産投資信託)を活用する方法もあります。近年ではオフィスやマンション、物流施設、商業施設などさまざまな施設に投資するREITが増えてきましたが、利回りや種別だけ見て投資するのは危険です。例えば商業施設なら、立地や築年数などの条件が良い物件がそろっているかなどを確かめたうえで、慎重に判断してほしいですね。

──バランス良く資産運用を行う意義を教えてください。

【井戸】現在のところ、株高が起きていますが、世界経済がどうなるかは、誰にも分かりません。かつてのように、株式をタイミングよく売買して、利益を得るという投資は難しくなっています。地味でつまらないと思われがちですが、地道に資産と時間の分散投資をバランス良く積み重ねていくのが一番の近道なのです。

NISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇も始まっています。こうした税制もうまく利用しながら、早いうちから資産運用を進めていきましょう。