ビジネス、社会の環境変化が著しい中、大学卒業後も、能動的な学びのもと、必要な知識やスキルに磨きをかけていくことは重要だ。しかし日本では、大学院で学ぶ人はまだまだ少ない。人口1000人に大学院在学者が占める数は、アメリカの9.32人、イギリスの8.33人、フランスの8.25人などに比べて、日本は2.07人(いずれも2009年)。25歳以上で大学・大学院に入学する人の割合も、OECD加盟国の平均21.4%を大きく下回る1.7%である。

そうした一方で、日本における社会人教育の環境は着々と整備されている。リカレント教育(OECDが提唱する生涯教育構想)の体制が強化され、ビジネスや社会での実践力を重視したコースを設ける教育機関も増えてきた。仕事と家庭において責任ある役割を担う、多忙な世代に配慮したカリキュラムを組む大学、大学院も珍しくなくなっている。

そこで、平日夜と週末に講義を行い、社会人が9割以上を占めるK.I.T.虎ノ門大学院を修了した30代から50代の男女4人に、入学のきっかけや直面していた課題、学びの効果などを聞いた。それぞれの生の声は、自らの殻を破りたいと考えている人、学びのきっかけを探している人にとって、きっと参考となるに違いない。
 

30代:外資系通信機器メーカー勤務

論理思考と多面的な見方で
コミュニケーション力が向上

吉川達郎
専攻:ビジネスアーキテクト専攻
入学年:2012年

日本と海外をつなぐ外資系メーカーで、いずれはマネジメント職を目指したいと考えていました。書籍などで独学を続けていた時に知ったのが、K.I.T.虎ノ門大学院の体験講座。試しに受講したところ、戦略思考やキャリア論の話が大変興味深く、腰を据えて経営を体系的に学びたいという気持ちに火がつきました。

K.I.T.では、「論理的に考える」チカラを鍛えたいという思いがありました。そこで有益だったのがやはり戦略思考系の科目。例えば、独学でも分析のフレームワークを学ぶことは出来ますが、それを様々なケースに繰り返し当てはめ、教授や他の院生とディスカッションすることによって、多面的に物事を見て、論理的に考え、意思決定を行うスキルを徹底的に鍛えることが出来たと考えています。また、現役の経営コンサルタントから最新のビジネス手法やトレンドを学ぶ「コンサルティング実践特論」や、現在の企業が抱える課題と対策を学ぶ「チェンジマネジメント特論」など、ビジネスの今を扱った授業にも大いに刺激を受けました。

さらに講義や課題があることで、忙しくても勉強のペースを保てたのも良かった。独学と異なり、学校が学びのペースメーカーになってくれたのです。平日の夜に、空き教室などで自習できたのも利点でした。

修了後はコミュニケーション力も向上しました。販売代理店の視点、ユーザーの視点など、多面的に物事をとらえると、自分の視点だけで見ていた時とはまったく違うことが見えてくる。SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)や組織論など、ビジネスのプロセス全般について学んだことも、視野を広げる助けになりました。

今後も仕事を通じて日本にない価値・技術を海外から取り入れ、日本の市場や社会をより豊かにしていきたい。そんなふうに考えています。
 

30代:特許関連情報サービス会社勤務

仕事、子育てと同時進行の挑戦が
キャリア形成に大きく貢献

丹羽麻里子
専攻:知的創造システム専攻
入学年:2008年

仕事、子育てと並行しながら大学院で学ぼうと決意したのは、特許関連の情報サービス会社に入って8年目のことでした。理由はキャリアの幅を広げたかったから。入社当時の希望だった翻訳業務に加え、特許の調査も行うようになって業務の幅が広がったのですが、文系出身だったため大きな仕事は任せてもらいにくかったのです。そんなとき、勤務先のすぐ近くに、知的財産や技術を学べ、工学修士の学位も取得できるK.I.T.虎ノ門大学院が開校。これはチャンスだと思いました。

仕事、育児、学業の同時進行はハードで、技術系の科目では苦労もしましたが、家庭では夫と実家の家族の協力も得ながら2年をかけて修了。入学前はある種の閉塞感もありましたが、今は希望の仕事に就け、非常に満足しています。

特に興味深かった授業は「工業所有権関連条約特論」です。日本の知財関連の法律ができる背景には国同士の条約がある。その条約を体系的に学び、法律の成り立ちと意味を掴むことで理解が深まりました。もともと勉強のスタイルとしては、丸暗記するより、「なぜ、どうして」と追求していくタイプ。その意味からも、少人数のクラスでいつでも先生に質問できる環境は良かったですね。

実は現在の勤務先へは、K.I.T.の先生からお誘いを受けて転職しました。海外からの仕事が増えたので、今は英語の授業を単科で履修しています。これからは、仕事と家庭で忙しい女性に、「学びたい思いを諦める必要はない」と伝える役割も担えたらと考えています。私自身、今後のキャリアを考えながら学び続けていくつもりです。