「3.5日のリズム」で
睡眠時間を上手にやりくり

気になる調査結果がある。体内時計が乱れやすいのは、高齢層に次いで、「35~44歳」の働き盛り世代だというのだ(図1)。「自分は大丈夫だ」と高をくくって無理を重ねるその裏側では、やはり、少しずつ針が狂っているのである。大きなトラブルを避けるためにも、きっちりと生活を改めておきたいところだ。では、時間医学の観点からポイントを探っていこう。まずは「睡眠」である。

「忙しい方は、どうしても起床、就寝が不規則になるでしょう。それを補うためには、たとえ短い睡眠時間しか確保できていなくても、できるだけ目覚める時刻を一定にしておくことが大事です。先ほども述べましたように、3.5日のリズムというものがあります。24時間のリズムが少々ズレていても、水曜日か木曜日に1時間ほど多く寝たり、土日に1、2時間程度昼寝をするといったことで、体内時計を調節することが可能です」

カギは、「起床時刻を一定にする」ことである。決まった時間に朝の光を浴びることによって、体内時計は一旦リセットされ、人間本来の生体リズムに近づくからだ。

「さらに、睡眠時間を季節によって変動させることもお勧めします。日照時間が長い時期なら、睡眠時間は1時間程度短く。冬場であれば、1時間程度長めがよいでしょう」
 もちろん、必要な睡眠時間には個人差がある。自分がどれだけ眠れば、日中、はつらつと業務をこなすことができるか。その目安を計る方法を図2に示したので、参考にしてみてはいかがだろうか。

食事を抜いてはいけない
その重要な意味とは?

もう一つ、体内時計を調節する大切な役割を担っているのが「食事」だ。毎日、3食をちゃんと摂ることで、生体リズムは着実に確立されていく。ダイエットのためだからと、食事を抜いてしまうのはNGだ。大塚先生は、「中でも、朝食には非常に重要な意味があります」と強調する。

「朝食を摂るという行為は、1日の始まりを体に知らせ、体内時計を正しい位置に戻す上で、とても強い作用をもっています。メニューの内容で意識しておきたいのは糖質です。人間の器官は夜眠っている間にも、翌日の活動に必要なエネルギーを再構築するために働いています。その主な動力源となるのが糖質。ですから朝食では、お米やパンなどによって、消費された糖質を補っておくことが望ましいのです。さらに、タンパク質、野菜などのミネラルを揃えるとよいと思います」

また、「塩分」の摂取についても、覚えておきたいコツがある。

「朝に摂取する塩分は、特に血圧をグッと上昇させてしまいます。仕事中は、ただでさえ血圧が上がりますから、量を抑えることを心がけてください。塩分を摂っても血圧が上がりにくいのは、夕食です」

最後に少しだけ、「運動」についても触れておこう。適度に体を動かすことが健康維持につながるのは言うまでもないが、「いつやるか」を把握していれば、より高い効果も期待できる。

「運動に向いている時刻は夕刻から夜にかけて。スポーツ選手は、その時刻に一番いい成績を出せるというデータもあります。血管や筋肉がしなやかになり、体が俊敏になるのです。疲労は睡眠を深くしてくれますし、思考力にも良い影響を与えるでしょう」

自分の生活は乱れている。まずは、そこに気づくことが改善への第一歩だと、大塚先生は助言する。多忙なビジネスパーソンにとっては、もはや「乱れた生活が当たり前」だからだ。

「最近は、スマートフォンを使って生体リズムの狂いを計ることができるサービスも登場していますので、試してみてもいいと思います」

健康のために、いつ、なにをやるのが適切なのか──。体内時計をイメージしながらの取り組みは、きっとこれまでとは違った手応えをもたらしてくれるに違いない。