澁川真実さん、荒麻吏さん
今年で創業72年を迎える総合広告代理店の株式会社産案。社員数は約40名と少数精鋭ながら、2010年度以降の取引先社数は累計4130社、取り扱い媒体数は累計622媒体に上り、業界内で高い実績を築いている。また女性の育休取得率が100%と極めて高く、復職後も女性が成長を続けられる組織風土が根付いているのも特徴だ。企業としての産案の強みと女性のキャリアを伸ばす環境について、同社を代表する女性リーダーの荒麻吏さんと澁川真実さんに伺った。

前例や固定概念にとらわれず、一人ひとりのチャレンジ精神を尊重

産案の強みは、常に時代の潮流を読み、顧客の課題やニーズの変化に応じて、柔軟かつ質の高い企画を提案できる点にある。20年ほど前には、それまで中心だった新聞・雑誌などの紙媒体に加え、業界でいち早くWEBに対応。さらにマスメディアやリアルイベントなど扱う領域を次々と広げ、顧客ごとにカスタムメイドした複合提案を得意とする総合広告代理店へと進化を遂げてきた。

この変革期に産案でキャリアを歩み、会社の成長をけん引してきたのが、部長職に当たるセクションマネージャーを担う、荒さんと澁川さんだ。二人とも新卒入社後は営業職に配属され、当初は従来通り紙媒体の広告枠を売っていた。だが顧客と信頼関係を深めるうちに「富裕層向けの媒体でPRしたい」「他社と共同で展示会を開きたい」といった相談を受けるようになり、それまで産案が手がけたことのない新規メディアへの出稿やイベントの企画に挑戦。

「上司や先輩も『広告を通じて社会に貢献したい』という強いマインドを持つ人ばかりで、熱意ある若手のチャレンジを応援してくれました」と澁川さんは新人時代を振り返る。

会社として長い歴史を持ちながら、前例や固定概念にとらわれず、社員のチャレンジ精神を尊重する。そんな産案の組織風土が、時代と共に変革を続ける原動力であることがうかがえる。

産案の強みである「提案力」と「柔軟性」を支えるのが、企画の提案から実現までを一気通貫で手がける社内体制だ。営業部・メディアプランニング部(MP部)・制作部・WEBマーケティング部が組織横断で連携し、クライアントが設定するKPIを達成できるように、チーム一丸となり提案から実行まで一連の流れをワンストップで行っている。

なかでも連携のカギを握るMP部について、トップを務める荒さんは「この部署の役割は、企画を“机上の空論”にしないこと。クライアントの現場をよく知る営業経験者を配置し、お客様の生の声とひもづいた企画をメディアと共に作り上げることにこだわっています」と話す。また営業部を率いる澁川さんも「各部署のプロフェッショナルが情報や知見を共有し、ワンストップで対応するからこそ、40名の規模で高いパフォーマンスを出せるのだと自負しています」と胸を張る。

(左)澁川真実(しぶかわ・まみ)コミュニケーションデザイン部兼経営企画室 セクションマネージャー(右)荒麻吏(あら・まり)営業部/メディアプランニング部 セクションマネージャー
(左)澁川真実(しぶかわ・まみ)コミュニケーションデザイン部兼経営企画室 セクションマネージャー(右)荒麻吏(あら・まり)営業部/メディアプランニング部 セクションマネージャー

この体制から生まれた代表的な企画に、2023年からパートナーメディアと展開中の「SDGsアワード」企画がある。中小企業によるSDGsの取り組みをWebサイトの記事で紹介するとともに、優れた事例を表彰するプロジェクトで、これまでに150社以上が参画。発信力が弱いという中小企業の課題に対し、パートナーであるメディアを通じて各社の取り組みを広く伝え、さらには表彰式というイベントに多様な業種・業界の企業が集まることで出会いが生まれ、協業に発展するきっかけも創出できる。これも産案ならではの「一気通貫×複合提案」の強みがあるからこそ、実現できた企画と言えるだろう。

出産と育児を経験したからこそ生まれたヒット企画

産案は女性がライフイベントなどでキャリアを中断することなく、成長し続けられる組織でもある。荒さんと澁川さんも育休を経て復帰し、仕事と育児を両立中だが、「子育てがキャリアの壁になるどころか、むしろプラスになっている」と口をそろえる。

例えば荒さんが復帰後に手がけた「ベビー&キッズフェスタ」も、出産と育児を経験したからこそ生まれた企画だ。0〜3歳児を持つ子育て世代を対象としたイベントで、「自分が育児をする中で『こんな商品やサービスがあると知っていたら、もっと子育てがラクになったり、子どもを楽しませてあげられたのに』と思うことがたくさんあり、ママやパパが育児に役立つ情報と出会う場を作りたくて企画しました」と荒さん。母親としての視点や実感を生かしながら、ビジネスとしてマネタイズできる企画を作り上げていけることに、大きな手応えを感じていた。コロナ禍で一度ストップした本イベントも、今は次世代の若手社員が企画リーダーとしてつなぎ復活。新たな視点が入ることで、より良い企画へと変化し続けている。

「一人ではなくチームとして成功に挑む姿はもちろん、自分たちが育児を楽しみながら仕事にやりがいをもって取り組んでいること、そしてときには失敗しつつも成長し続ける姿を見せることで、若手や後輩が希望を持って自分のキャリアを歩める環境を作っていきたい」と語る二人。自分たちの背中を見せることがメンバーへの成長へとつながっていき、その一人ひとりの「個」の力が「チーム=会社」の力となって、産案をさらなる進化へと導いていくだろう。