事務から営業へ転身した女性がトップセールスに
かつては男性社会のイメージが強かった輸入車業界も、近年は女性活躍の場が広がっている。Audi、Volkswagen、JAGUAR、BYDなどのブランドを扱うフィデル・グループでも、2020年に社長に就任した中村氏のもと、性別や年齢にかかわらず誰もが活躍できる環境整備を進めてきた。
海外経験が長く、ダイバーシティが当たり前の環境に身を置いてきた中村氏は「そもそも社員を男性と女性で区別するという発想がない」と話す。
フィデル・グループ・ホールディングス株式会社 代表取締役社長
鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校卒、慶応大学理工学部卒。現三菱UFJ銀行に入行、同ニューヨーク支店勤務。2005年ゴールドマンサックス入社、同ニューヨーク本社勤務を経て帰国。2012年世界最大級英国ヘッジファンド入社、世界的にもまれな日本人パートナーに昇格。2020年フィデル・グループ・ホールディングス設立、代表取締役に就任。
「ひと昔前の自動車販売業界は、女性の役割がショールームの受付や補助業務に偏っていた時代もありましたが、女性が力を発揮できる分野はまだまだある。男女を問わず一人ひとりが自分の得意なことを活かし、活躍の場を広げてほしいというのが私の考えです。販売の最前線を担う営業職でも、女性の採用を積極的に進めています」
意欲や適性のある社員には、会社が本人の意向を聞きつつ営業への配置転換を促すなど、女性がチャレンジしやすい雰囲気を醸成。女性の営業は順調に増え、なかには全国で上位に入る販売成績を達成するケースも出ている。
BYD AUTO鹿児島のセールスコンサルタント、牧平良子さんは営業事務を担当していたが、「数字で実力を評価される仕事に挑戦したい」という強い意思のもと、自ら手を挙げて営業に転身。「ひと月に5台売れば好成績」といわれる高級輸入車の販売において、10台以上を売る月もあるほどの目覚ましい活躍を見せる。
またAudi厚木のAudiエキスパート、髙橋永恵さんは新規顧客への対応に定評があり、同店が新たに獲得した顧客のうち、約半数は彼女を通じて購入に至っている。「二人はまさに会社を代表するトップセールス」と中村氏も高く評価する。
「彼女たちの接客を見ていると、特にファーストタッチの対応がうまいですね。人当たりが柔らかいので、初対面でも相手の緊張や不安を取り除ける。男女で区別しないのは大前提の上で、女性の営業だからこそ獲得できるお客様も多いことを実感しています」
女性の活躍は他の社員にも良い刺激となり、お互いに高め合って職場の雰囲気が良くなる好循環も生まれている。
「女性が活躍できる環境は、男性を含めて誰もが活躍できる環境でもある。実際に数字を見ても、女性が活躍している店舗は業績が伸びています」
さらには役職者にも女性や30代の若手など多様な人材を登用。一方で、育児や介護などの事情を抱える社員も働きやすいように、それぞれの都合に応じて出社・退社時間や休日の設定を調整するなど、勤務体系も柔軟に運用している。
加えて「2027年度までに男性育休取得率100%」を目標に掲げており、全社員が自分らしく、働きやすい組織風土づくりに向けて一層の取り組みを進めていく方針だ。
EVの展開や再エネ活用でサステナビリティに貢献
「世界観を広げ、人生を豊かに」とのブランドメッセージを掲げるフィデル・グループ。顧客の生活の質を高め、新しいライフスタイルを提案するため、SDGsやサステナビリティの取り組みにも力を入れる。
近年は各ブランドが取り扱う電気自動車を展開し、2023年からは中国のEVブランドであるBYDも導入。思い切った設備投資により、EVの普及に欠かせない充電器を各店舗に配置して、より多くの顧客に環境配慮型製品の快適さや便利さを提供できる体制づくりを進める。
また屋上に約500枚の太陽光パネルを設置し、使用電力を自家発電でまかなう店舗もあるなど、再生可能エネルギーの活用にも積極的だ。
「自動車販売業の特長は、店舗や在庫スペース、工場などの不動産を多く所有すること。そのメリットを活かし、環境負荷低減に寄与できる様々な施策を展開して、サステナブルな社会づくりに貢献したい。持続可能な未来の実現に向け、今後もフィデル・グループは多様な人材活用とモビリティ環境創出の両面から取り組んでいきます」
