国内一本足の経営ならリスクは冒せない

――2012年12月期決算について、どのように評価されていますか。
キリンホールディングス社長 三宅占二氏

【三宅】12年秋に13~15年までの中期経営計画を発表し「海外事業がグループ全体の成長を牽引する3年間になる」と申し上げたのですが、それが前倒しで12年の実績に反映されました。オーストラリアのライオン社が収益面で完全に黒字反転し、ブラジルキリンはEBITDA(利息や法人税などの税金、減価償却費を引く前の利益)5億5000万レアルという目標に対し、6億レアルを超える収益をあげました。一方、国内事業についてはキリンビールがやや苦戦しましたが「一番搾りフローズン<生>」のような新しい価値を提案するカテゴリーが育ちつつあり、キリンビバレッジはまだまだ収益面に課題があるものの「メッツコーラ」の大ヒットや「世界のkitchenから」というシリーズがお客様を広げ、ボリューム面で業界平均以上に伸びています。今後、こうしたよい芽をしっかり伸ばしていけば中期計画は達成できるという手応えを感じています。

――3000億円を投じたブラジル事業は「投資額が膨らみすぎ」との批判もありましたが、その判断は正しかったと。

【三宅】ブラジルは消費量でも成長率でも大変有望な市場であり、ビールも清涼飲料も持っているスキンカリオール社(現ブラジルキリン)は総合飲料戦略を採る我々の強みが一番出せる相手でした。これを逃すとほかによい案件はそうはない。投資家やアナリストには不安感を持たれてしまったかもしれませんが、結果として正しかったと思います。もちろん大きなリスクを伴う投資でしたから、100%子会社化した後、企業文化の違いを徹底的に把握して、お互いの長所を生かす統合を徹底しました。

――どのような取り組みを。

【三宅】たとえばブラジルは成長市場で、会社はファミリー企業だったので、コスト部分の非効率があるわけです。物流効率の改善や生産効率の改善は日本の厳しいマーケットで我々が何年もやってきたことですから、国内バリューチェーンの精鋭をどっと送り込み、徹底的に現地の方たちと一緒に取り組みました。新しいCEOをどうするかも1つの課題でしたが、最終的にCOOだったジーノ・ディ・ドメニコを内部から昇格させたことで、マネジメントチームに一丸となって再建しようというやる気が出てきました。一方、予想以上だったのは営業力で、とくに北東部エリアでは流通との人間関係が非常に強く、専売特約店のロイヤルティが高くてしっかり動いてくれます。私も現地へ行って販売部隊と一緒に回りましたが本当に凄いですよ。キリンビールの営業部隊に教えたいくらい(笑)。