2013年5月10日(金)

業界再編すれば、電力は安定、コストが下がる

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2013年5月13日号

著者
大前 研一 おおまえ・けんいち
ビジネス・ブレークスルー大学学長

大前 研一

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

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ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前研一/小川 剛=構成 AFLO=写真
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火力発電の燃料費が電力各社の利益を圧迫

今春4月2日、安倍内閣は発送電分離を含む電力システム改革を以下の3段階で進める閣議決定を行った。2015年を目途に電力会社が、地域を超えて電力を融通し合うための「広域系統運用機関を設置」。16年には電力会社が地域独占している「家庭向けの電力小売りを全面自由化」して、18~20年頃に電力会社の発電部門と送配電部門を別会社にする「発送電分離の実現」を目指すという。

この発表を読む限り原発をどうするのか、電力会社の役割をどうするか、電力の安定供給は誰が担うのか、といった視点を欠いている中途半端なものだ。今回の政府の「電力システム改革」の実現性は相当に厳しいものと言わざるをえない。しかし、電力の安定供給を確保するためには、電力業界の再編は必要だ。

現在、原発を代替している火力発電の燃料費が電力各社の利益を圧迫していて、この状況があと数年続けば債務超過に陥って存続が危ぶまれる電力会社も出てくるだろう。福島第一原発の事故後、東京電力はなし崩し的に国有化され原子力損害賠償法(原賠法)で生命維持されているが、原発が停止したままで燃料費の高騰などによって苦しんでいるその他の電力会社については、救済の手立てが何も講じられていない。

日本の電力会社は“地域独占”で、北海道なら北海道電力、東北なら東北電力と、「9電力」に分かれているが(原子炉を持っていない沖縄電力は除く)。これは戦時中に電力事業が国家管理となり、「日本発送電」という国策会社が発電と送電を管理して、配電を9社が担ったことに由来している。戦後、日本発送電は分割・民営化されて、発電、送電、配電まで一貫地域独占の9電体制がスタートした。

現在の「9電体制」の問題とは何か。まずは電力供給が地域バラバラで、全国をつなぐネットワークがないことだ。日本の電力網は、新潟県の糸魚川を境に東は50ヘルツ、西は60ヘルツに分かれていて(糸魚川ライン)、このラインをまたいで融通できる電力は、100万キロワット程度しかない。

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