エネルギー戦略とニュークリア戦略を
表裏一体で進めてきた
福島第一原発事故後、全国の原発が次々と停止したため、日本のエネルギー・電力の需給環境は“非常事態”で、政府のエネルギー政策は迷走している。
「3.11」以前、電源構成の37%を占めていた原子力がほとんど使えなくなった。そのため火力中心のエネルギー構造となり、燃料輸入が1日当たり100億円も増加して日本の貿易収支を押し下げているのだ。
電力不足と電力コスト高のリスクが常に存在し、日本の経済社会、国民生活に多大な影響を及ぼしている。エネルギーコストの増大や安定操業のリスクを回避するために、海外に出ていく企業は増加していて、産業の空洞化が加速している。
安倍政権は、民主党政権が打ち出した「2030年代に原発稼働ゼロ」の見直しを公言している。しかしながら、「原発の稼働は3年以内に結論を出す」「遅くとも10年以内には将来にわたって、持続可能な『電源構成のベストミックス』を確立する」という悠長な政権公約が存在するだけで、それ以上の具体的なエネルギー政策は見えてこない。
では、日本のエネルギー問題のアンバランスをどうやって解消すればいいのか。それを論じる前に、日本のエネルギー政策の流れを振り返ってみよう。
1970年代の石油危機の後、日本は時間をかけてエネルギー源の分散化を図ってきた。まずは石油メジャーやOPECに過度に依存しないで石油資源を確保できるように、供給ルートを開拓して調達国を分散してきたのだ。さらに原子力やLNG(液化天然ガス)など新エネルギーの開発に力を注いで、エネルギーソースも分散化してきた。