マーケティングの局面で市場情報を収集し、縮約化する。その際に必要なのは、理論と市場情報の両者の攻守が入れ替わる批判的対話であると、今回から連載を担当する神戸大学の栗木契教授は説く。

市場情報と格闘する際の難点とは

マーケティング戦略の重要性。今日の日本でこれを認識していない企業は、もはや少数派といってよいようだ。とはいえ今でも、この認識に、マーケティング戦略の策定活動やデータ分析活動が追いついていない企業は少なくない。皆さんの会社はどうだろうか。昨年末に出版された『日本企業のマーケティング力』の中で、一橋大学准教授の山下裕子氏たちは緻密な実証分析を通じてこの問題の所在を確認している。

つまり、今の日本企業がマーケティングの局面で必要としているのは、いかに行うか(how)の高度化である。そしてそこで重要となるのが、マーケティング・インテリジェンス活動。すなわち市場情報を縮約化し、そのインテリジェンスを組織内に普及する活動である。

以下では、このマーケティング・インテリジェンス活動の前段である市場情報の縮約化によるインテリジェンス導出について、知的武装という観点から問題を考えてみたい。

市場情報を収集し、縮約化することの重要性。これについては、あらためて説明する必要はないだろう。問題はこの活動の焦点をどこに置くかである。断片的でうわさ話のような情報に振り回されることは避けたい。そこで、マーケティング担当者は、幅広く、偏りのない市場の声を集めようとする。アンケート調査はその定番ともいえるツールである。しかし、単に偏りなく顧客の声を集めればよい、というわけではないのが、市場情報と格闘する際の難しい点である。