薪ストーブつきの夢の家の残債は……

水嶋秀一さん(仮名)●広告代理店勤務 52歳
【年収】1100万円【貯金】0円【家族構成】妻と子供2人

10年前に35年で組んだ住宅ローンの残債が4000万円以上ある。「定年後は起業も考えていますが、不安は残ります」。

52歳で広告代理店勤務の水嶋秀一さん。家計を管理するのは夫である水嶋さん自身。なんと貯金通帳片手に数字を読み上げてくれた。妻に家計をまかせっきりの人が多い世代の男性では珍しいタイプだろう。

「年収は、最高時1500万円くらいあったかなあ。不況で賃金カットがあって今は1100万円ほど。月々の払いで大きいのは10年ほど前に建てたこだわりの家のローンですね。ドラマ『北の国から』の家を実際に見て、触発されて建てました。土地を含め6800万円のローンを75歳までに完済予定です」

土地を探し、インターネットで海外のドアノブや蛇口などの内装品を個人輸入し、壁を家族で塗った自慢の家。薪ストーブはこだわりの逸品だ。しかしストーブのメンテに年4万円もかかる。

「娘2人は妻の出身校に通わせて、幼稚園から私立でした。1人はもう大学生だけどね。妻は犬が好きで大型犬を2匹飼ってる。車は犬が乗るし、やっぱり手放せない」

次々繰り出されるバブル時代を象徴する「幸せのアイテム」にクラクラする。車、犬、私立に通う子供、専業主婦の妻、そして建て売りではなく、自分たちで設計した家……。プレジデント読者世代も、これが幸せのセットと信じて投資してきた人が多いのではないだろうか?

しかしこの世代はもはや「幸福の逃げ切り」は難しい。

「家を建てた頃の予定では、今ごろ年収2000万円ぐらいになってるはずだったんですよ。でも逆に、数百万も下がっちゃった。教育費が年間190万円。車の税金が3万円。月のローンは8万円。保険が夫婦で4万円。食費が全部で15万円ぐらいかな。犬のトリミング代が1回3万円。宅配の食材が3万4000円ぐらいで、娘の小遣い1万8000円……」