ここぞというときにウケる話を持っていることは、ビジネスシーンにおいて強みになる。私自身もともと人見知りで、会議や打ち合わせ中は自分の意見を言うのが恥ずかしく、下を向いて気配を消しているようなタイプだった。しかし芸人のトーク術を分析して実践した結果、笑いを入れることで話が注目してもらえるようになり、自信を持ってプレゼンできるようになった経験がある。

とはいえ、自分が面白いと思った話をしても、なかなかイメージ通りに笑いは取れないものだ。まずはどうしてあなたの話がウケないのか、その理由を考えてみよう。

よく目につくのが、話の組み立てに問題がある場合である。ウケるトークの理想は起承転結をしっかりつくって、簡潔に収めること。1分程度が望ましい。登場人物の特徴や余計なディテールなど、枝葉の部分を語っていては相手に飽きられる。たとえば、次のようなケース。

×「僕の友達の話なんですけど、すごいいいヤツで、昔は部活のキャプテンやっていて、映画に詳しくて……」

逆に、説明不足で話が短すぎても、「どういうこと?」と首を傾げられてしまう。相手に聞いてもらうためには、自分が伝えたいことを明確にして、どの部分が重要か不要かを整理しておかなければいけない。

2つ目は、話の内容そのものが問題となる場合。ビジネスでは、人のネガティブな話題で笑いを取ることは避けるべきだ。たとえばお客さんの愛すべきキャラクターについて話したくて、

×「取引先のNさんが飛行機の搭乗口でチケットをなくしちゃって、出発を10分遅らせたんですよ」

と話したとしよう。しかし意図とは関係なく、他人に迷惑をかけた部分だけが1人歩きして伝わり、「あいつは陰口を叩く人間だ」と受け取られる可能性もある。もし失敗談で笑いを取りたいなら、自分の経験を語ったほうがいい。ただし、それも天秤の片方の皿に笑いを、もう片方の皿にトークを乗せたとき、笑いのほうに皿が傾くかどうかを常に気にしたい。つまり、

×「昔、よくスーパーで万引していて、商品をカゴに詰めて帰ったことがります」

というような楽しい・面白いの感情より、悲しい・不快の感情が上回るような話は避けること。自慢話や成功話がウケないのも同様の理由である。また明らかなウソも、聞き手に不信感を抱かせるのでやめよう。