仕事もプライベートもトントン拍子に進む幸せな人と、何をしてもトラブルに見舞われる不運続きの人がいるのはなぜだろうか。気鋭の研究者が心理学的に解説する。

他人に配慮できる人ほど運がいい

あなたの周囲を見回してみると、仕事でもプライベートでもなぜかいつもツイていて物事がトントン拍子に進む人はいないでしょうか。逆に、運に見放されたか のように何事もうまくいかず、沈み込んでいる人はいないでしょうか。このような幸運、福運、強運の人と、不運、悲運、悪運の人はなぜ生まれるのでしょう か。そして、両者はどこが違うのでしょうか。

私たちは「認知的焦点化理論」というものを唱えています。人が心の奥底で何に焦点を当てているか。そこに着目した心理学上の研究です。

ひとことで言えば、ある人が物事に向き合うときに、どのぐらい他人のことを配慮できるかという観点から、人を分類しようとする試みです。

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図1

図1をごらんください。横軸は社会的・心理的距離軸を示し、自分を原点として、家族・恋人→友人→知人→他人……と、右に進むほど関係は遠くなります。他方、縦軸は時間軸です。物事の対処に当たり、思いを及ぼす時間の幅を示すもの。「現在のことだけ」か「2、3日先」か「自分の将来まで」か「社会全体の将来まで」か……と徐々に幅が広がっていきます。横軸と縦軸を結ぶ曲線で囲まれた面積は、配慮範囲の大きさを表しています。

たとえば、極端に利己的で目の前の自分の損得のみに心の焦点を合わせている人は、横軸、縦軸とも目盛りゼロの原点付近に位置します。後先を考えずに怒りに任せて人に暴力をふるう犯罪者などがこれです。

逆に、自分から遠い存在である他人のことまで思いやる人ほど、あるいは遠い将来のことまで配慮する人ほど、曲線で囲まれた面積は大きくなります。幕末の志士など、人望あるリーダーがこちらに当てはまります。