2013年1月25日(金)

楽天・ユニクロ社長に「英語公用語化」反対の手紙を送った理由

PRESIDENT 2011年4月18日号

著者
津田 幸男 つだ・ゆきお
筑波大学大学院教授

津田 幸男1950年生まれ。南イリノイ大学博士。長崎大学助教授、名古屋大学教授を経て2001年より現職。11年4月、英語公用語化に反論をつきつける『日本語防衛論』を刊行。

筑波大学大学院教授 津田幸男 構成=面澤淳市 撮影=的野弘路
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なぜ非英語圏の人は不利なのか

楽天、ユニクロ(ファーストリテイリング)という当代きっての人気企業が「英語の社内公用語化」に踏み出した――。驚くべきニュースに接した私は、10年7月、両社の社長に注意喚起を促す手紙をお送りしました。

私の専門は「英語支配論」「言語政策」です。英語支配が世界の言語や文化に与える影響を主な研究テーマとしています。その観点から、両社のような注目度の高い企業が、英語の公用語化という思い切った施策をとるのは大きな問題があると考えたのです。

それはなぜか。簡単にご説明しましょう。

英語は事実上の「世界標準語」であるといわれます。各種国際会議で使用されるほか、政治やビジネス、あるいは観光、娯楽においても主役の地位を占めています。世界の人々とコミュニケーションをとることができる、便利な言語であるのは間違いありません。

しかし、こう考えてみたらどうでしょう。

英語とはアメリカ合衆国や、かつての大英帝国の言葉です。アメリカ人やイギリス人の母語が世界標準語として使われているということは、彼らにとって非常に都合のいい状態です。その一方、私たち日本人のように英語を母語としない非英語圏の人々にとっては、非常に都合が悪いのです。

なぜなら、英語を母語とする人たちは、この世界標準語を特別な学習なしに習得しますが、私たちが英語をマスターするためには、学校教育に始まり長期間にわたって延々と勉強を続けなければなりません。それでもなお、私たちの英語力がネイティブ・スピーカーに追いつくことは困難です。

その間の努力を英語圏出身者は別のこと、たとえば専門の研究に振り向けることができます。これは私たち非英語圏の人間が背負わされた、理不尽なハンディというべきではないでしょうか。

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