がんと診断されたら、どうすればいいのか。腫瘍内科医の勝俣範之さんは「ネット上に氾濫している『体験談』から治療法を探してはいけない。がんは非常に個人差の大きい病気なので、治療については自己判断で決めつけずに、医師としっかり話し合うことが大切だ」という――。

※本稿は、勝俣範之『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

机の上に置かれたパソコンや聴診器
写真=iStock.com/dragana991
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がん治療は「カスタムメイド」の時代

がん治療で保険適応の標準治療は、ひとりひとりの患者に合わせた「カスタムメイド」なんですよというと、びっくりされる方が多いと思います。

「標準」という名前が誤解を与えているのだと思います。

そもそも標準治療とは、英語の「スタンダード・セラピー」を、単純に日本語訳にしたものです。日本人にとっての「標準」は、「並みの」「必要最低限の」「ありきたりな」というイメージですが、本来の「スタンダード」には、「模範的な」「一流の」「権威ある」という意味があります。

世界のがんの専門家たちが集まって徹底的に調べ、有効性や安全性を確認した信頼度の高い治療法――それが標準治療です。

つまり標準治療には、「誰もが模範にすべき一流の治療」という意味が込められています。だからこそ、最新の抗がん剤など、とても高額なものでも「健康保険が適用」されているのです。

さらに言うと、現在の標準治療は、手術、放射線、薬物などの3大治療と緩和ケアを加えた4つの治療法に分かれますが、これらの治療法の順番や組み合わせは患者さんに合わせて変えながら行うのが基本で、だれにとっても同じ「最適解」のようなものがあるというわけではありません。

患者さんごとに、がんの種類やステージ(病期)のほか、患者さんの意思、年齢、持病の有無、臓器の機能といった身体の状況、仕事や生活様式などの状況や背景などを、がんの専門医をはじめとしたさまざまな医療スタッフが集まり、チームを組んで、精査、考慮しながら治療プランを作っていきます。

患者の家族も「チーム医療」の一員

手術を担当する外科医から放射線腫瘍医、病理医、臨床検査技師、心理士、緩和ケア医、看護師、そして抗がん剤治療の専門医で、がんの総合医である腫瘍内科医などが参加して治療を進めるトータルな「チーム医療」が、がん治療の基本です。

チームとして患者さんの診断を行い、治療方針を検討することを「キャンサーボード」や「カンファレンス」といいます。

そして患者さんを支えるご家族も、このチームの一員です。

医療はどんどん新しくなりますから、患者さんやご家族の声がとても重要で、それらを受けて専門家の知見を集約し、治療法が決まっていきます。

がん治療は、患者さん一人一人のカスタムメイドの治療というのはそういう理由からです。