近い将来、女性の正社員数が非正規を超える

【海老原】2019~2022年のデータを見ると、女性の非正規は減ってきています。女性の正社員は長らく低位安定していたものが、2013年くらいから海老反るように急増をしました。正社員増から非正規減まで5年強ありますが、その理由は、非正規の人は、一度退職して育児に専念したのちパート職に就くケースが多くて、ここにタイムラグが発生していると考えます。育児期の短時間勤務での復職が普通となった今は、正社員を「辞めない」から「パート復職者」が減る。だから、非正規は減少を続け、近い将来、正社員数が逆転すると読んでいます。

【図表4】女性の正規社員数と非正規社員数の推移
※総務省「労働力調査」詳細集計をもとに海老原氏作成。『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』より

【上野】正社員に関しては、企業が辞めさせないだけでなく、女性も離職することの不利益を知って仕事にしがみつくようになりました。非正規に関しては、私は数が減った理由はコロナ離職だと考えます。非正規女性の多くはサービス業や宿泊、飲食など、コロナ禍で最もダメージを受けた職種に就いていますから。

【海老原】それにしても、直近の非正規女性数は2019年のピーク時に比べるとかなり減っています。そして、非正規に関しては絶望的に人手が足りないからと企業も給与を上げ始めました。このペースで給与アップが続き、加えて5年勤続で無期化していくと、そのうち正社員と非正規どっちでもいいかな、という社会になっていく可能性もあると思うんです。

企業はあくまでも都合よく働いてもらいたいだけではないか

【上野】非正規に女性が多いのは、能力や意欲が高くても正社員にはなれない、上のポストには上がれないという構造を、企業と男性がつくり上げてきたからです。今はどの企業も、女性に働いてもらうのはマストだと思いますが、あくまでも都合よく働いてもらいたいだけでしょう。

実際、女性では新卒非正規、つまり初職が非正規でずっとそこに固定されてしまう人も出てきています。私は、女性の正社員と非正規の分断はそう簡単には解消しない、むしろ進行していくだろうと思います。

【海老原】男性は初職が非正規でもどんどん正社員化されているので、そうした性差別はまだありますね。それでも僕はやはり、そんな構造もこれから変わっていくだろうと期待してしまいます。前述のようにパート主婦が細り、前期高齢者が激減しています。こうして非正規のなり手が不足すれば、企業は待遇も評価も劇的に変えていかざるを得ませんから、それが構造変化につながるのではと考えています。