「オレたちもまだまだ抜かれるわけにはいかん」

【豊田】今、自動車業界は解答がない時代にいます。解答がない時はまず行動するしかない。やりながら、共感できる仲間を増やしていく。面白いと思って行動すれば未来の景色は変わる。

卒業生たちを見てください。ほんと、みんな面白い。卒業式の間は一斉に起立して、卒業生代表もいい話をする。規律があります。でも、その後、もう一度、集まって僕らと握手会みたいな、記念スタンプを押す会をやりますけれど、普通の18歳に戻って、やんちゃですよ。でも、うちの現場はそういうところなんです。みんなが面白いから現場は回っていく。

一糸乱れぬ動きで起立と礼をし、一人ひとりの名前に大きな声で返事をする卒業生が印象的だった
撮影=長谷川智哉
卒業生は一糸乱れぬ動きで起立と礼をし、一人ひとりの名前に大きな声で返事をする姿が印象的だった
【豊田】卒業式では私だけでなく、壇上の幹部は涙ぐむ。だけど、その後のスタンプ会ではみんな笑ってる。はじけてますよ。私も学園のみんなから元気をもらっています。育てて頂いている保護者、先生方にも本当にいつも感謝してます。

もうひとつ大事なことがあります。学園のみんなには現場に入ったら早く成長してほしい。一方で、僕らも頑張らなきゃいけない。これまた河合おやじが言うのですが、「若いもんには早く成長してほしいけれど、オレたちもまだまだ抜かれるわけにはいかん。自分たちも成長しなくちゃいかん」

私も含めて、現役社員、新しい人が入ってくるたびに成長しなきゃいけない。

わたしは卒業式後のスタンプ会の様子も見た。確かに、18歳は元気だ。はじけまくっていた。トヨタ工業学園は真面目ひとすじの優等生タイプを育成する学校ではないことはよくわかった。

豊田自動織機、ダイハツ工業、日野自動車の責任者として

次の話題はグループ会社の不正、不祥事についてだった。

【豊田】認証というのは一定のルールで安全面、環境面における基準をクリアにし、この車を量産してもいいという認可を得るものです。今回はそこで不正があった。ただし、不正イコール、乗っていただいている車が危険であるということではないんです。そのことを説明するのが遅れました。そこがいけなかった。

これではトヨタグループへの信頼を失ってしまうと思ったので、私が出ることにしました。そして、責任者は私ですと名乗り出たわけです。今回のような不正が出ると、責任追及と犯人探しが始まります。そうしたら、私が出るしかない。はい、私が責任者ですと名乗り出ることで、叩かれるのは私になる。

そうすれば、うちの現場は元に戻れます。現場はちゃんと動くんです。大切なのは現場をしっかりと動かすこと。ただ、私は叩かれます。