神田昌典(かんだ・まさのり)
上智大学外国語学部卒。大学3年次に外交官試験合格。4年次より外務省経済部に勤務。ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士取得後、米国家電メーカー日本代表を経てコンサルタントに。累計出版部数は200万部を超える。

歴史サイクルを俯瞰して時代の潮流を読み、商品のライフサイクルを表す成長カーブを会社の寿命にあてはめて、このままいくと2024年には会社はなくなると予言する。いま会社を支える40代、30代の中には同じ危機感をもつ人もいるだろう。

「15年前から僕の本を読んでくださっているいまの40代は、しっかりお金を稼ごう、そのお金で家族を幸せにしようという価値観で生きてきた。一方で、18年には自分たちの息子や娘のうち10人に1人が、お金に依存しない生活を送るようになります。日本人の年収がアジアの平均レベルまで下がり、200万円の年収で500万円の生活をしようとすると、GDPが国力を決めるという概念自体、古くなっていく可能性が十分にある。つまりシェアの時代の到来です。そのとき、自分の子どもと同じような価値観で生きられるかというと、そうでなく、彼らの役割はお金を稼ぎ続けること。経験と能力を最も生かせるという意味と、これまでの豊かな時代の日本に育ててもらった恩返しという意味で」

とくに40代にとっての働き方のヒントのひとつが、本書でも紹介される「共立起業」だ。固定的な事務所も社員ももたず、フリーエージェント同士がプロジェクトごとにチームを組む。

「いまは人類史上、最も起業しやすい環境といってもいい。僕自身、会社を解散するという経験をして、結果として以前より雇用は増えています」

選択肢はほかにもある。自分にとって理解しやすく、いちばんフィットするやり方を選べばいい。重要なのは、どうしたらこれからの国のデザインに個人が貢献できるかという視点だ。

「さまざまな価値観がある中で、それぞれの価値観を認めながら、それでも自分はどの道を選択し、どの価値観を生きるのかを理解して、実際にそれを生きるというのは、なかなか難しい」

各章にちりばめられたそれぞれの世代へのメッセージが刺さる。40代へ。「本当に熱中できる仕事に、リスクはない」。

(的野弘路=撮影)
【関連記事】
仕事空間をシェア「コ・ワーキングスペース」
『ワーク・シフト』著者、リンダ・グラットン教授に聞く「なぜ私たちは漠然と未来を迎えるべきではないのか」(上)
BYOD -仕事は親指で片付けよう
あなたの隣に「フリーライダー」はいませんか?
なぜ就職氷河期を不況のせいにするのは誤りなのか