質問に肯定を重ねていく

避けたいことを受け入れてもらうには、心理的な安全性を確保する必要があります。具体的にいえば、「攻撃するつもりはありませんよ」と伝え、相手の警戒心を解くことです。警戒心を解く方法はいたってシンプルです。人は否定されると心を閉ざすなら、その逆をやればいい。そう、「肯定する」です。

誰かを叱るときをイメージしてみましょう。「佐藤君はよく提出物が遅れるから気をつけなさい」これは、否定です。相手の心はいきなり閉ざされます。心が閉ざされている状態では、あなたの伝えたいことは相手の心の中に入っていきません。では、「肯定する質問」とは?

「佐藤君は約束を破る人じゃないでしょ」(肯定)+「今回はどうして提出物が遅れたの?」(質問)

さらに、

「佐藤君は普段しっかりしているからさ」(肯定)+「何かあったんじゃない?」(質問)

などと重ねていきます。

相手の警戒心を解けば自然と本音が出てくる

「田中さんは普段、いろんな意見を話してくれるじゃん」(肯定)+「でも会議だと発言の数が減る気がするんだけど、どうだろう?」(質問)
「田中さんのことだから何か考えは持っていると思うんだ」(肯定)+「会議では言いにくい環境だったりする?」(質問)

肯定+質問で伝えると、相手の警戒心が解かれ、「実は会議みたいに大勢の人がいるところで発言するのが苦手で……」などと、本音を吐露してくれるかもしれません。叱るときは、まずは肯定することで心理的な安全性を確保する。これを知ってから、私のマネジメント力は大きく飛躍し、最初は5人くらいのチームから、最終的には300人ものメンバーを統率するまでに至りました。

「叱らせるようなことをする本人も悪い」。そう言う人もいます。ただ、誰かを叱るとき、怒りに任せて口走るのは、開いていない扉をハンマーで壊すようなもので、相手はズタズタになります。そしてあなたの手もボロボロになります。相手の心の扉を閉ざすのが否定。開くのが肯定。肯定が、あなたの言葉に潤いを与え、相手と心を通じ合わせる潤滑油になるはずです。

一流は、肯定してから質問する
⇒心理的な安全性を与え、相手の警戒心を解く
コーヒーショップで話をするビジネスマン
写真=iStock.com/PlatooStudio
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