実は大正時代に作られた制度

このように、会社員には税務申告の自由がありません。税金は給与から天引きされ、かかった経費を控除できません。

しかも会社が倒産し失業するリスクもあるため、会社員は優遇しなければならない、というのが政府の言い分でしした。

この制度の原型が作られたのは、実は大正時代です。

大正から昭和初期までは、自営業のほうが安定していて「勝ち組」だったので、会社員のほうを保護すべき、という感覚だったのです。

ですが、今では会社員のほうが「勝ち組」です。個人事業主・フリーランスは、自由ではありますが、会社員に比べると不安定な働き方です。

しかも政府税調の調査では、会社員の必要経費は収入の約3%に過ぎないことが判明したようです。前述の通り、給与所得控除を「収入の3割」で設定するのは多すぎるというわけです。

さらに、主要国の制度と比較したところ、日本の給与所得控除の水準は非常に高いことがわかりました。

日本の上限は195万円ですが、フランスの場合は約164.5万円、アメリカは約147.6万円(他の控除も含む)、ドイツは定額約13万円、イギリスはゼロと、かなり低いのです。

これらを踏まえ、政府税調は「日本の会社員は税金が優遇されている」と主張しているのです。

沖縄県酒造組合から琉球泡盛を贈られ、「泡盛の女王」と写真に納まる岸田文雄首相。(2023年7月24日撮影)
写真=時事通信フォト
沖縄県酒造組合から琉球泡盛を贈られ、「泡盛の女王」と写真に納まる岸田文雄首相。(2023年7月24日撮影)