視覚的な勉強と聴覚的な勉強

おそらく、担任の先生はそうしたことを期待して私を科学教室に誘ってくれたのでしょう。いずれにしても、科学との出合いが私の人生を一歩も二歩も前進させてくれたことはたしかです。しばらくすると必修漢字もすべて覚えきり、アメリカ生活の2年間のブランクを取り戻すことができました。

やっとビリから脱出したものの、中学校に入るくらいまでは成績がよかったというわけではありません。どんなに必死で勉強しても、クラスで真ん中くらいの成績を取るのがやっとでした。

勉強中に頭を抱える子どものイメージ
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

私が中学1年生だったあるとき、だったと思います。そんな私を見かねてなのか、当時小学校の教師をしていた伯母が学習教材を2冊買ってくれました。たしか『自由自在』という参考書と、いまはもうないかもしれませんが『トレーニングペーパー』というドリルです。

特にトレーニングペーパーは、イラストがたくさん入っていて、楽しく勉強できるものでした。それからは、もらった参考書とトレーニングペーパーを使って、主に算数と国語の予習と復習をするようになりました。

しばらくして予習と復習の習慣が身についた頃、勉強中にふと気づいたことがあります。私は視覚的な勉強が苦手なのではないか……と。

自分にあった勉強の方法

私たちは普段、五感を使って物事を理解しています。「目で見たほうが覚えやすい」という視覚優位タイプや、「音を耳で聞いたほうが覚えやすい」という聴覚優位タイプなど、人によって得意な方法が異なります。これは勉強も同じ。勉強の方法によって、理解力や記憶力に差が出ることがあるのです。

私の場合は、音を耳で聞いたほうが覚えやすい聴覚優位タイプでした。たとえば√2(ルート2)を覚えるとき、「一夜一夜に人見ごろ(ひとよひとよにひとみごろ)」と語呂合わせで覚えたりしますが、このように音で覚えるほうが自分に合うと気づいたのです。

その後は自分で「微分積分」の公式を「上ポンマイナス下ポン」といった語呂や音を勝手につけて、覚えたりするようになりました。ずっとあとになって知ったことですが、多くの天才数学者も、公式に自分が好きな音をつけたり、何か道具を使ったり、なかには勝手に記号をつくったりして覚えていたようです。

伯母からもらった参考書とトレーニングペーパーを使ってひたすら予習と復習を繰り返し、さらに自分に合う勉強法に気づいて暗記に活用したりして学習するうち、私の成績は徐々に上がっていきました。そして中学2年生になったとき、成績で学年トップになったのです。