東大が選んだ新課程という道

2月19日には読売新聞朝刊が東大の新課程設立構想を報じました。

「世界水準の研究や人材育成を目指し、東京大学が2027年秋に新学部に相当する5年間一貫の教育課程を創設する方針を固めた。医学から文学まで、東大が持つ教育・研究資源を最大限に活用した文理融合型の課程で、気候変動や生物多様性など、従来の縦割りの学問領域では解決が難しい地球規模の課題に対し、解決策を導くことができる人材を育てる。

新課程は、学部の4年間と大学院修士の1年間を合わせた5年制。(中略)世界中から優秀な学生を集めるため、欧米の大学で主流の秋入学とし、授業もすべて英語で行う」(読売新聞オンライン 2月19日配信記事)

大阪公立大学と東大、どちらも秋入学と英語公用語化という軸については全く同じです。

ところが、大学・教育関係者の間では反応がきれいに分かれました。

大阪公立大学については厳しい見方が大半を占める中、東大については好意的な反応が多数です。同じ英語公用語化、同じ秋入学であるにもかかわらず、なぜ東大は反応が違うのでしょうか。

その理由は全学・一部導入ではなく、新課程の新設だからです。

東京大学
写真=iStock.com/ranmaru_
東京大学赤門

デメリットは承知の上

前記の読売新聞記事は教員についても触れています。

「新課程の教授陣は、既存学部との兼任に加え、優れた研究成果や実績を持つ民間企業の研究員や実務家のほか、東大独自の基金の運用益を活用し、海外からも一線級の研究者を招聘しょうへいする」

既存学部の教員だけでなく、民間や海外からも広く招聘する、とあります。つまり、英語力が低く授業展開も難しい教員をどうするか、と悩む必要がありません。

学内外とも、新課程の理念に共感できて英語力の高いことを応募条件にすればいいだけです。これは学生も同様です。募集要項には秋入学と英語力の高さを明記することでしょう。それで、合わないと思った受験生は既存学部を、合うと思った受験生は新課程を、それぞれ選択していきます。

受験生側も納得したうえでの受験・入学ですから、秋入学や英語公用語化のデメリットも承知の上。

それに、新課程の定員は「1学年100人程度」(前記・読売新聞記事)。うち日本人学生は半数程度、とあります。それくらいの人数であれば、グローバル人材を求める企業であっという間に就職も決まっていきます。

仮に、大学卒業後から就職まで間が空いたとしても、それを苦にする学生はいないでしょう。受験前から分かっている話であり、むしろ、その空白期間(ギャップイヤー)を利用するくらいの学生が集まるのではないでしょうか。