生き残る条件

ではどうやってこの戦争を戦うのか? 買い物という行為の革命とすると自社の強みを以下のように再点検する必要がある。

1)自社の商品はオリジナリティがあるか?

どこにでも売っている商品は価格だけで決まるため、アマゾンのような競争力を持っている事業者が圧倒的な強みを持つ。価格競争しないためにはオリジナル商品を一定以上保有していないと厳しい。そのためPBはますます増えるだろう。あのドンキホーテも最近はPBを増やしている。このままいけばヤマダ電気もビックカメラもPB商品を増やすしか道は無い。もちろんその商品が魅力的でなければいけないが。

2)顧客に短時間で届ける手段を有しているか?

EC側は物流勝負である。どれだけ在庫を切らさずにかつ短時間で届けることができるかが鍵を握る。そして当日配送が広がれば、すぐ食べたい食品、生鮮食品以外は宅配でよくなる。店舗が買っても自宅へすぐに届けてもらえるのであれば高齢化していく買い物客にとっては嬉しいサービスだ。店頭在庫を持ち帰ってもらう前提の小売り店舗はここでもEC事業者に差を付けられてしまう。物流は小売り企業達にとっても重要である。店舗からピッキングするベースで伸びているネットスーパーもより効率化し、利益率を高めるために配送センターへの投資が始まりつつある。

3)接客が価値か

接客に価値がある店舗を有していれば、店舗の強みとして残る。しかし、これからの接客はただ店頭で対応するだけでなく、SNSなどのソーシャルメディアやオウンドメディア上での顧客とのコミュニケーションも重要である。そうした接客に顧客が価値を感じられるのであれば接客は十分競争力となる。米国のベストバイは店舗スタッフの専門性や接客能力が強みである小売りのひとつであるが、そうした優れた店舗スタッフをTwitterでの顧客の応対にも活用している。また書店やCDシュップなどのデジタルコンテンツによるダイレクト流通にどんどんシフトしていくことが見えているが、膨大なコンテンツから選択してくれるキュレーターがむしろ店頭で対応することで結果的にはデジタルになっても店舗に足を向ける人が増えるモデルを創ることも可能だろう。

4)店舗は何度も行きたい魅力に溢れているか?

イギリスのIKEAがfacebookでお泊まり会というキャンペーンを企画し非常に盛り上がった。これはIKEAの店舗で泊まりたいというファンがとても多かったからであるが、お店に泊まってみたいと思われるほど店舗に素晴らしい魅力があるということは大事なことである。世界観の表現、スタッフ達との交流の場など店舗に求心力があれば立派な競争力である。

5)顧客を把握しているか?

オンライン事業者の強みは顧客とのリレーションシップが強く、CRMが実現していることである。これまでリアル店舗は日販など日々の売上の方が重要であったが、今後は顧客との関係性をしっかり構築しなければ生き残ることはできない。顧客一人一人の行動データを把握することができることは重要である。

以上の5つの条件を満たしていないところはAmazonや楽天などのEC事業者にどんどん顧客を奪われ続けることになるだろう。今や世界一の企業であるアップルはアップルストアを活用して全てを満たしている。つくづくアップルストアという直営店舗の価値の高さがわかる。