植田総裁が初めて現状を「インフレ」と指摘した

また、日本国内の不動産価格の大幅上昇や、株価の上昇といった「資産インフレ」に火がついた。首都圏の新規発売マンションの平均価格が1億円を突破、日経平均株価も34年ぶりに最高値を更新した。にもかかわらず、1990年代のバブル期のような消費などに波及した景気過熱は起きていない。マイナス金利の放置によってカネあまり状態が維持されていることも、こうした資産インフレの要因と見られるし、円安が海外マネーの投資を誘っている面も強い。つまり、今の日銀の大規模緩和金融政策の副作用と見ることができる。

どうやら、そんな状況を放置できなくなったのか、日銀の植田総裁が2月22日に衆議院予算委員会に出席、初めて、現状を「インフレ」と指摘した。今はインフレかデフレかと聞かれた植田総裁は、「賃金上昇を反映する形でサービス価格が緩やかに上昇する姿は続いている」とし「去年までと同じような右上がりの動きが続くと一応、予想している。そういう意味でデフレではなくインフレの状態にある」と語った。この発言は、マイナス金利解除に向けた「地ならし」と受け止められている。

衆院予算委員会で答弁する日銀の植田和男総裁=2024年2月22日午後、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会で答弁する日銀の植田和男総裁=2024年2月22日午後、国会内

日銀が金利をどんどん引き上げるとは思えない

もっとも、だからと言って、日銀がFRBのように金利をどんどん引き上げてインフレ退治に乗り出すとは思えない。景気が過熱した結果のインフレではないからだ。消費者物価の上昇で、実質消費はマイナスに転じている。生活が苦しくなった分、消費を抑えようとする行動が広がっているからだ。それを補って余りある賃金上昇になるのかは、現段階では見通せない。かつてのバブル期のように株価の上昇が国民の懐を温めて、一気に消費が増える格好になっていない。そんな中で、資産インフレに冷や水を浴びせるような金利の大幅な上昇は日銀は望まないに違いない。