「ひろゆきから生活費もらってないの?」

フリーランスのウェブデザイナーになったばかりのころ、ひろゆき君が役員を務めていた会社の仕事を手伝ったことがあった。

「仕事を頼みたい」と声をかけてくれたのは、ひろゆき君に出会う前から知っていた人だった。その人がひろゆき君と同じ会社で働いているということを知ったとき、偶然に驚いたものだ。

でも、昔から知っている人だったからこそ、私も少し油断したのかもしれない。

その人に依頼された仕事をはじめてしばらくすると、事務所に呼び出された。

会社の資金繰りがうまくいっていないので、私に支払うギャランティーを少し減額したいという話だった。

そのときの私は、ほかにも仕事があったし、減額されたら生きていけないという切羽詰まった状況でもなかった。それに、昔からの付き合いを大事にしたいと思ったから快諾した。

ところが、しばらくしてまた呼び出された。やっぱり経営がうまくいっていないから、さらに減額してほしいという話だった。

「いくらですか?」とたずねると、最初のギャランティーの半額を提示された。

とても了解できるような金額じゃなかった。

「これはさすがに無理です。ほかのクライアントさんとも、こんな金額でお仕事したことなんてありませんから」と私がきっぱり言うと、

「ひろゆきから生活費もらってないの?」
「もしかして2人はうまくいっていないの? 困ったことがあるなら相談してね」

などと、ぜんぜん関係ない話に持っていこうとする。

写真提供=徳間書店(撮影=松園多聞)

「彼女だからいいように使えると思っただけ」

「いやいや、それはこの話と関係ないですから」と私が反論すると、その人は私との契約を打ち切ると言ってきた。

そして、捨て台詞として「ひろゆきの彼女だからいいように使えると思っただけだ」とまで言いやがったのだ。

腹が立って悲しくて、家に戻ってからひろゆき君にこのことを話した。

ひろゆき君の話では、資金繰りがうまくいっていないというのは、その人の嘘だった。しかも、その人が、会社のお金を使い込んでいたらしい。

だから、正直に言うと、ひろゆき君が私のためになにか対処してくれるんじゃないかと思った。悪いことをしているのはそいつなのだから。

でも、そんな私の期待をよそに、ひろゆき君はこう言った。