国の政策で説明できる

最近、ある研究者グループはこう説明している。「子どもを持つことの感情的な報酬は、現代の子育てに関連するストレスによって影を潜めている」。感情的な報酬が、親を支援する政策がない国での子育てのストレスによって、曇ってしまっているのだ。

例えば、働く親のための保育料補助や、親が子どもと過ごす時間を確保するための寛大な有給休暇である。この2つの政策(手頃な保育料と有給の病気休暇と長期休暇)だけで、産休や健康保険といった他の支援政策がなくても、親と親でない人の間の幸福度の格差を完全に埋める力がある。フランス、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンには、これらの政策やそれ以外の政策があり、親のほうが親ではない人よりも8%も幸福度が高いのだ。

研究者らは、幸福度における「親であることの不利な点は、国家の政策背景によって最大100%説明できる」と結論づけた。

子育てを「不幸な仕事」にする政策

アメリカの出生率が低下していることに政治的な懸念が広がっているにもかかわらず、子育てを不幸な仕事にしている政策の修正は、ほとんどされてこなかった。1993年に制定され、12週間の無給の出産休暇を保証する法律である「家族・医療休暇法」を、アメリカ人女性の約半数が使えていないのだ。

労働統計局によると、アメリカの労働者のうち、期間を問わず有給の育児休暇を取得できる資格を持っているのは、わずか23%である。2021年後半、民主党が下院、上院、ホワイトハウスの多数を占めていたとき、議員らは、全員ではないものの、多くの働く女性にわずか4週間の有給出産休暇を与える法案を可決できなかった。

比較のためにカリフォルニア大学ロサンゼルス校の世界政策分析センターのデータを紹介すると、政府が定めた有給産休の世界平均は29週間だ。

子犬を飼ったことがある人ならご存じのように、1年で成犬になる哺乳類の犬は、一般的に生後8週間まで母親から引き離されることはない。

また、産休だけではない。親と子のためのヘルスケアは、雇用と連動しており、その質と費用はすべて雇用主の寛大さにかかっている。高齢者介護は、その費用を支払うことができる場合にのみ存在する。つまり、私たちの多くは、子どもを産むことを考える前に、経済的にもその他の面でも、老いた両親のケアをすることになるのである。

22年、連邦最高裁がロー対ウェイド判決を覆す判決を下したことで、半数以上の州が、女性や子どもに何か恐ろしいことが起こった場合に妊娠を終了させる女性の能力を大幅に制限することになった。妊産婦死亡率ですでにほとんどの先進国に大きく後れを取っているこの国で、妊娠と出産のリスクがさらに高まっている。