1980~90年代にかけてブラジル国内で放送された日本の特撮ヒーロードラマ人気が今も続いている。そのブームの火付け役となったのは、2人の日系人だった。サンパウロ在住フォトグラファー兼ライターの仁尾帯刀さんが取材した――。(後編/全2回)

1日17本の特撮ドラマが放送されたことも

ブラジルでは1980、90年代に日本製特撮ヒーローのテレビドラマが何度も放送され、子供たちを夢中にさせた。放送回数は増え続け、複数のテレビ局により1日に計17本の特撮ドラマが放送されたこともあった。

特に人気の高かった『巨獣特捜ジャスピオン』では、関連グッズはおもちゃやお面にとどまらず、コミック、LPレコード、文房具など多岐に及んだ。

始まりは日本から持ち帰った「18本のビデオ」

1980年に佐賀大学に県費留学し、翌年ベスト電器佐賀本店で研修した日系1世の江頭俊彦さん(67)はブラジルに帰国する際、自らと父のために買ったビデオデッキ2台と日本でテレビ録画した18本のビデオを持ち帰った。まさか後に自分がブラジルでの特撮ブームの火付け役になるとは想像していなかった。

かつてブラジルで興行したヒーローショーのマスクを自邸で抱える江頭俊彦さん
筆者撮影
かつてブラジルで興行したヒーローショーのマスクを自邸で抱える江頭俊彦さん

ブラジルで海賊版ビデオに対する法規制が緩かった当時、江頭さんは帰国した1982年にビデオをダビングして、既に新ビジネスとして芽生え始めていたレンタルビデオ店を営むことに思い至る。インターネットやNHK国際放送などなかった時代、ブラジル日系人は海の向こうの祖国の映像コンテンツに飢えていたのだった。