近年、プロ野球界を代表するスター選手が次々とMLBの球団に移籍している。ライターの広尾晃さんは「最大の責任は、MLBとの経済格差を放置した日本プロ野球界にある。格差を是正する縮める努力をしなければ、日本のプロ野球界に未来はない」という――。
シカゴホワイトソックスの本拠地・ギャランティード・レート・フィールド
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日本球界を代表するエース投手が次々にメジャー参戦

MLBの今シーズンオフは、日本人投手の移籍の話題で持ちきりだった。

大谷翔平は10年7億ドル(約1015億円)というプロスポーツ史上最高額の契約でドジャースにFA移籍した。

オリックスに所属した山本由伸も12年総額3億2500万ドル(約465億円)というMLB投手史上最大級の契約で、これもドジャースにポスティングでの移籍が決まった。

さらにポスティングシステム期限ぎりぎりの1月11日にはDeNAにいた今永昇太も4年総額5300万ドル(約77億4000万円)で契約したと発表された。

とりわけ山本由伸は、MLBで1球も投げていないのに、MLBの一線級の投手を上回る契約を勝ち取った。それだけ今、NPBの投手に対するMLBの評価が高いのだ。

山本の契約に大きな影響を与えたのは、直近でMLBに移籍した千賀滉大だろう。昨年、海外FA権を行使してソフトバンクからメッツに移籍した千賀滉大は規定投球回数に到達し16勝7敗。防御率2.98はナ・リーグ2位、奪三振202は8位だった。

パドレスのダルビッシュ有やドジャースの大谷翔平だけでなく、NPBの一線級の投手はそのままMLBでも通用することが、その後に移籍した投手でも証明されているから、1球も投げていない山本由伸も極めて高い評価が与えられたのだ。

もちろんトラックマンやホークアイなど最先端の計測機器によって、山本の投球データは精彩に分析されている。そのデータによって投球のレベル、質の高さが裏付けられているのは言うまでもない。

オリックスが得た巨額のポスティングフィー

山本が移籍したポスティングシステムについて説明すると、海外FA権を持たない選手がMLB移籍を希望した際に、球団の了承を得てNPBコミッショナー事務局からMLB側へ告知し、MLB球団が入札して交渉権を獲得するというシステムだ。ロッテの佐々木朗希もこのシステムを使ってのMLB移籍を考えているとされている。

MLB球団への移籍が決まると、NPBの所属球団には契約金に応じてポスティングフィー(移籍金)が支払われる。

山本由伸の場合、古巣オリックスには5062万5000ドル(約71億8875万円)のポスティングフィーが支払われる。オリックスの年俸総額は24億円程度と言われているから、ほぼその3倍だ。

オリックスは昨年もレッドソックスにポスティングで移籍した吉田正尚のポスティングフィーとして1537万5000ドル(約21億円)を得ている。昨年、オリックスは吉田に代わって西武から強打の捕手、森友哉をFA移籍で獲得したが、おそらくはその原資となったはずだ。