民主主義にかける思いは日本の有権者も見習うべき

台湾はまだ若い民主主義の国です。ですから、選挙を通して自分たちの未来を選んでいくという、民主主義に対する期待度が高いのだと思います。過去、選挙によって、その期待を裏切らない結果が良くも悪くも出ているのが、その証拠です。

これまで述べてきた通り、民進党と国民党は政治方針がかなり異なります。ですから選挙民たちは、もし自分たちが支持しない政党が政権を握ったら、世の中がガラッと変わってしまうどころか、台湾にとって破滅が待っているのではないか、とまで心配する。

それは、選挙によって世の中が変わるということを体感しているからにほかなりません。選挙とは本来こうして真剣に候補者を一人ひとり選んでいくのだな、台湾において民主主義が健全に機能しているのだなと、強く実感できます。

野嶋剛『台湾の本音』(光文社新書)
野嶋剛『台湾の本音』(光文社新書)

もちろん、台湾の特殊な事情も関係しています。しかし、民主主義の重要さを考えるうえで大事な何かが台湾で見えることは確かです。それは投票によって何かを変えることができるという「信仰」が生きている社会は、やはり風通しがいい、という点です。

私はよく、大学の教え子たちに向かって「未来を変えるためにも、投票へ行きなさいよ」という話をします。ところが、たいてい「先生、投票したって日本は何も変わらないじゃないですか」という返事が戻ってきます。

そんな言葉を聞くたびに、民主主義の理想を選挙に賭ける台湾の姿を説明し、その思いを学んでほしいと願っています。

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