現代ほど自分がダメに思える時代はなかった

連帯したグループから追い出されないよう、脳は常に「私はこのグループに適している?」「私で大丈夫?」「私にはここにいさせてもらえる価値がある? そのくらい賢い? 面白い? かっこいい?」と問いかけています。

しかし現代の私たちが生きる環境は脳が進化した頃とはまったく違っています。今ほど自分がダメに思える理由が多い時代はいまだかつてありません。

SNSでは常に、見た目には完璧な人生を見せつけられます。友人の修整済みの写真投稿(誰だって1番素敵な自分を見せたいですし、満足した写真しかのせません。それは皆同じです)、さらには何千人というインフルエンサーのキラキラした人生が連続投下されてきて、それと自分を比べてしまいます。

後ろに見えている景色からインテリア、化粧、照明まですべてプロの手を借りていると頭ではわかりつつも、です。

写真はもちろん編集されていて、ちょっとした難点くらいいくらでも隠せます。その結果、とてもではありませんが自分には手の届かないようなレベルになっています。

自分にとっての自分(脳が見せる自分のイメージ。お世辞にもイケてるとは言えません)と他の人(彼らが見せたい素敵なイメージ)を比べたら、いつだって自分が負け犬、もう本当に完敗です。

ベッドに横たわり、スマホを使用する女性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

SNSが心の健康に与えている影響

そして私たちの多くが、起きているほとんどの時間スマホを手にしているため、常に自分よりもかっこよく、賢く、リッチな人気者がいることを思い知らされることになります。

その影響で、私たちはヒエラルキーの下へ下へと落ちていき、グループから追い出されるリスクが高まったように感じるのです。それを脳は何よりも恐れているはずなのに。

とはいえ「人間はこれまでもずっと自分を他人と比較してきたのでは?」と思うかもしれません。それはそうなのですが、昔はグループも小さくてぱっと見渡せるくらいのサイズでした。

ところが現代の私たちは世界中の人と競っているのです。

SNSを見ている時間やインフルエンサーの存在がどれだけ影響を与えているのか、正確に証明することはできませんが、グループのヒエラルキー内で自分の地位が下がり続けていると感じると、心の健康を害するのは実に当然のことです。