「上から国民を染め上げる」組織文化は健在

筆者には非難された大山県議が、かつての田村氏自身と重なって見えた。

ツイッターで発言した田村氏と、党大会での田村氏。前者の方が実像に近いのではないかと思う。昨年、週刊誌の企画で自民党の野田聖子、立憲民主党の辻元清美の両氏と「女性リーダーを増やす」ことをテーマに対談した時も、率直な物言いに好感を持った。

党大会で大山県議に対処した田村氏の硬直した姿勢は、そうした印象とはかなり違っていた。田村氏個人というより、大会全体の空気感を体現したものだったと思う。

それは大会決議によく表れていた。驚いたのは、前回(2020年)の大会決議にはなかった「革命」という言葉が、大きく前面に打ち出されたことだ。「不屈性と先見性を発揮し、革命の事業に多数者を結集する」という言葉が、本文どころか見出しに躍っていた。

もちろん、共産党はとうの昔に暴力革命を排除しているし、現在の綱領でも「日本社会が必要としている変革は、社会主義革命ではなく、資本主義の枠内で可能な民主的改革」とうたっている。だが、この言葉からは、上層部が上から国民を「指導」し、一つの方向性に染め抜く組織原理が垣間見える。どうしても統制的な組織文化を想起させてしまう。

前述の大山県議の発言は、こうした党風への違和感の表明であり、それに対する田村氏の姿勢は、結果として上記の「統制的な組織原理」が現存していることを、内外に広く知らしめる形になった。

日本共産党の選挙カー
日本共産党の選挙カー(写真=morinohito68/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

時代に合わない「政党の体質」は若者にも嫌われる

共産党にとって不幸なのは、こうした組織原理が、同党の目指す政策や政権戦略と合わなくなりつつあることだ。

「ジェンダー平等社会をつくる」「性的指向と性自認を理由とする差別をなくす」「長時間労働や一方的解雇の規制」「企業・団体献金を禁止」「再生可能エネルギーへの抜本的転換」「国民のくらしと社会保障に重点をおいた財政・経済の運営」……。

共産党の綱領に書かれた政策の大半は、他の野党の主張と重なる。目指す社会像は野党各党の間で、かなり共有されている。また、しばしばやり玉に挙げられる「日米安全保障条約の廃棄」については、党自身が「連立政権には持ち込まない」姿勢を明らかにしている。

だが、政策と並んで重視すべきなのが「政党の体質や政治手法」だ。上意下達で統制的、異論に対し「指導」の形で結果的に発言を抑えてしまう政党文化は、人権を尊重し多様性を重んじる社会を目指す姿勢とは相容れない。

共産党が本気でこうした社会像を目指しているのか、姿勢が疑われかねない。近年注目されている「心理的安全性」の概念からも外れており、若い世代にも敬遠されそうだ。国政政党として時代に合っているとは言い難い。