北欧のデンマークはなぜ世界一のビジネス先進国になれたのか。デンマーク文化研究家の針貝有佳さんは「デンマークが国際競争力ランキングで世界ナンバーワンに選ばれた背景には、圧倒的な『ビジネス効率性』を実現する未来を見通す『先見の明』にある。普段はのんびりしているデンマーク人だが、じつはさりげなく準備しているし、いざ変化が起こったときの機動力は半端ない」という――。

※本稿は、針貝有佳『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

コペンハーゲン、デンマーク、ニューハウン
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素敵な矛盾に満ちた「ビジネス先進国」の正体

北欧のデンマークは、素敵な矛盾に満ちている。

スーパーに行っても気の利いた弁当もデリもなく、約500〜1200円のサンドイッチやサラダくらいしかなくて、商品の選択肢の少なさに悲しくなる。もっと何か、まともでリーズナブルなものはないのだろうか。

しかし、進学・結婚・離婚・就職・転職といった人生の岐路において、あれかこれかの二者択一は迫られない。幅広く張り巡らされ合流や分岐を繰り返す電車の路線のように、人生の選択肢は複数用意されていて、軌道修正がしやすい。

一般的に食への関心はそれほど高くなく、ランチは茶色いライ麦パンのオープンサンドを食べれば十分といった国民である。それなのに、料理を楽しむ男性は多く、世界のガストロノミーをリードするレストランが意外とある。ただし、目を疑うほど高額である。

物価が高くて、カフェでカフェラテ1杯とサンドイッチ1個を注文するだけで約2500円する。一方で、約2500円が一般的に最低ラインの時給でもある。

税金が高く、消費税は25%で、給料の約半分を税金として納めなければならない。けれど、医療費も教育費も無料で福祉が充実しているので、人生なんとかなるという安心感がある。

家庭菜園を楽しみ、週末には公園や森を散歩し、のどかな自然を愛する国民たち。それなのに、高齢者もITを駆使し、ネットバンクやオンライン手続きを当たり前に利用する「デジタル化先進国」でもある。

面積は九州程度で、人口は約590万人(千葉県より少ない)の小さな国であるにもかかわらず、幸福度・貧困率の低さ・格差の小ささ・汚職率の低さ・デジタル化・国際競争力など、社会的な国際ランキングにおけるデンマークの存在感は圧倒的である。

だが、こういった矛盾は、実際に暮らしていると、矛盾ではなく、必然なのだとわかってくる。一見矛盾していることには、しかるべき因果関係があるのだ。まだイメージが湧かないかもしれないが、本書(『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』)を読み終える頃には大いに納得してもらえるだろう。