不穏なプロポーズ

それから2年後の39歳の頃、共通の友人のSNSがきっかけで同い年のIT系企業で働く男性と知り合った。

交際が始まってから2〜3カ月経つと、男性は「結婚してください」とプロポーズ。片桐さんは驚きつつも、「はい」と答えた。

彼は、「お袋と姉貴が大反対すると思うけど、絶対に説得するし、できなかったら絶縁してでも結婚するから」と言った。片桐さんは、「私の離婚歴のせいかな?」と思ったが、彼の姉も離婚歴があるということを聞いていたので、そこまで心配してはいなかった。

しかし、彼が母親や姉に結婚を反対されると思っていたのは、片桐さんに離婚歴があるからではなかった。

片桐さんと出会う前、時々母親はいつまでも独身の息子に、「あなたがひとりでいることが一番の心配事だわ……」とこぼしていた。そのため彼は30代半ばに差しかかると、「まぁ、この歳で付き合ってるんだから結婚すればいいのかな?」と思い、そのとき交際中の女性を家族に紹介した。

ところが彼女が帰宅した途端、当時70代の母親と、彼より6歳上の姉は口を揃えて、「あなたのことを全然立ててない!」「あんな子ダメよ!」とダメ出しが始まる。

それを横目に兄は、「お袋と姉貴のお眼鏡にかなう女性なんて存在しないよ。お前がそれでも結婚したいと思える子じゃないと結婚なんて無理だね」と言った。

5歳上の兄が結婚した時はまだ父親が生きていた。父親は、「お前が好きな人と結婚すれば良い」というスタンスだったため、結婚まではスムーズだった。だが結婚後は、母親による兄嫁いびりが始まったという。

畳の上で乱雑に置かれた座布団
写真=iStock.com/Kana Design Image
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そんな経験があったため、彼は片桐さんへのプロポーズの後、「母と姉の説得に苦戦するだろうな」と思ったのだった。