「ユダヤ人は死に値する」ヒトラーの演説

このユダヤ人蔑視の感情や行動は、19世紀後半のヨーロッパで拡散する。

ユダヤ人はセム語系統の民族であって、西欧のアーリア民族に比べて劣っているという人種主義思想となったのである。

これが「反ユダヤ主義(Antisemitism、アンチセミティズム)」である。

そして、ロシアなどでユダヤ人迫害(ポグロム)の嵐が吹き荒れた。

20世紀になって、この思想にとりつかれたのがヒトラーである。

1920年8月13日にホーフブロイハウスで行われたナチ党集会で、ヒトラーは演説し、「ユダヤ人は国家を建設する力を持っていない。ユダヤ人は労働意欲を持たない。人種としてあらゆる欠陥を持っている。放浪の民で独自の文化がない。ユダヤ人は、諸国家で寄生虫として生き、権利を享受しながら義務を果たさない。ユダヤ人は死に値する」と断言した。

1933年1月に政権に就いたヒトラーは、ユダヤ人迫害を実行に移し、アウシュビッツ収容所などで、600万人を虐殺した(ホロコースト)。

破壊されたドイツの鉄十字の旗
写真=iStock.com/Henadzi Pechan
ヒトラーはユダヤ人迫害を実行に移した(※写真はイメージです)

ユダヤ人の受難の歴史

そもそもユダヤ人はどのようにして各地に散っていったのか。

古代のユダヤ人の歴史は『旧約聖書』に記述されている。ヘブライ人は紀元前1500年ごろに世界史に登場。ヘブライ人の最初の家長であるアブラハムが、カナーン(今のパレスチナ)に移住し、そこに約1600年住んだという。

ヘブライ人は、紀元前17世紀ごろにエジプトに進出し、紀元前13世紀ごろにはエジプトから追い出されて(いわゆる「出エジプト」)カナーンに戻り、ダビデ、ソロモンの時代に繁栄する。