昨今は「アプリ婚」も登場しているが…

両者は、いわば昭和の皆婚を実現した結婚の社会的お膳立てシステムといえるもので、特に「職場結婚」においては、上司のお節介が、その是非はともかく婚姻数に寄与したといえるでしょう。会社側も、男性社員のお嫁さん候補としての女性社員を採用し、「寿退社」という形で回転率をあげていたという事実もあります。

ところが、今や会社や上司が社員の結婚などに口を出すことは、セクハラやパワハラの対象ともなり、上司が部下に言うのはもちろん、若い社員同士でも恋愛のアプローチをすることがリスクとなる時代になってしまいました。こうしたお膳立て婚は減少率63%です。

昨今、マッチングアプリなどの婚活サービスで結婚する夫婦が増えているなどという報道もありますが、増えているとはいえ、全体に占める割合は2021年時点でいまだ13%に過ぎません。しかも、これらは一見デジタル時代の新たなお膳立てシステムのように思えますが、結局は「街のナンパのデジタル版」でしかなく、リアルでモテる恋愛強者男性にとって便利なツールと化しています。

むしろショーケースから商品を選択するかのごとく条件検索をされるがゆえに、選ばれる者と選ばれない者との格差がより強烈に顕在化しています。

自力で結婚する層は40年前から減っていない

マッチングアプリはお膳立てが必要な恋愛弱者層を救うわけではなく、そもそもお膳立てなど必要のない恋愛強者たちがより多くの恋愛相手を見つけるためのシステムであり、根本的に婚姻増に結びつくとは思いません。

【図表1】出生数と婚姻数の要因別減少率推移 1995~2022年

まとめると、婚姻数減少の要因は、「初婚同士の婚姻の減少」「夫年上婚の減少」「職場やお見合いなどのお膳立て婚の減少」というもので占められていることになります。逆にいえば、再婚や同い年婚、お膳立てに頼らず、自分の好きな相手と出会って恋愛して結婚する自力婚はほとんど減っていないということです。3割の恋愛強者は放っておいても勝手に恋愛し、結婚していくでしょう。

問題は、圧倒的多数の恋愛に受け身な7割のほうです。彼らを拾い上げてきたのがお膳立てシステムで、皆婚はこれによって実現されたといっても過言ではありません。とはいえ、いまさら昭和の伝統的なお見合いが復活することは無理だし、推奨されるものではありません。

既婚と独身の年収に114万円の差がある事実

そもそも全員が結婚するという皆婚が異常だったわけで、「結婚したくない」という選択が尊重されることは大切なことです、が、同時にそれは、お膳立てがなければ結婚できないという不本意未婚は放置されることになります。

自由恋愛、自由結婚ということは、「結婚しない自由」と同時に「結婚したくてもできない不自由」をもあわせて生み出すものなのでしょう。

最後に、婚姻減のもう一つの大事な要因である経済環境の問題についても触れておきます。

就業構造基本調査において25~34歳未婚男性の年収中央値は、1997年352万円に対して、2022年は345万円と、増えるどころか逆に減っています。逆に、既婚男性の同中央値は1997年441万円から2022年は459万円と増えています。既婚男性の絶対数が減っている中で、既婚男性の年収中央値だけがあがっているということは、「金のある男性しか結婚できなくなっている」ことの表れでもあります。

事実、かつての皆婚を支えていた年収中間層の結婚だけが減少しています。自由恋愛による結婚とは、ある程度お金に余裕のある層だけに許された自由となっているのです。

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