時間ドロボーは、日常生活のいたるところに隠れています。スケジュール通りにテキパキと予定をこなしたいのに、渋滞に巻き込まれて約束の時間に遅れてしまったり、上司から仕事を突然割り当てられて残業を強いられたり。こうした予想外の出来事に出くわすたび、私たちは「時間ドロボーに時間を奪われた」と感じて憤慨しています。

ただ、私たちの時間は本当に盗まれたのでしょうか。実際は何かに仕事の邪魔をされても、物理的に1日の時間が減るわけではありません。誰にとっても、1日は24時間。時間ドロボーの被害に遭ったからといって、1日が23時間になることはないのです。

時間の「量」は変わらないのに、なぜ時間を奪われたという感覚が生まれるのか。原因は、時間の「質」にあります。たとえば机に1時間向かっていても、目の前の仕事に集中できたケースと、雑音などで気が散って集中できなかったケースがあります。どちらも量的には同じ1時間ですが、後者の場合は「雑音によって時間が奪われた」という感覚が生じます。つまり私たちは時間の量ではなく、時間の質を奪われたときに「時間ドロボーに遭った」と感じるわけです。

ここを履き違えると、時間ドロボー対策は的外れなものになるでしょう。多くの人は忙しくなると、「足りない時間をどうやって捻出するか」といった時間の増減に意識を向けてしまいます。しかし、24時間という枠の中であれこれと考えても、24時間以上に時間が増えることはない。そうではなく、時間の質をいかに高めるかという視点を持つことが効果的な時間ドロボー対策につながります。

質の高い時間とは、どのような時間を指すのか。ここで考えていただきたいのがファンクション(機能・役割)です。製品やサービス、ビジネス、組織など、世の中のあらゆるモノやコトにはファンクションがあり、その価値は「F(ファンクション)÷C(コスト)」で表すことができます。