2012年10月30日(火)

新ビジネスのリスクをどう判断するか

「やっかいな課題」をどう解くか【2】

PRESIDENT 2010年11月1日号

著者
内田 和成 うちだ・かずなり
早稲田大学ビジネススクール教授

内田 和成1974年、東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て85年ボストンコンサルティンググループ入社。2000年から04年まで日本代表。06年より早稲田大学ビジネススクール教授。著書に『仮説思考』『論点思考』ほか。

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早稲田大学ビジネススクール教授 内田和成 構成=村上 敬 撮影=市来朋久
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市場と競合、2つのリスクを検討すべき

内田和成 
早稲田大学ビジネススクール教授

慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月までBCG日本代表、09年12月までシニア・アドバイザーを務める。

新規事業というネーミングは誤解を招きやすい表現だ。

新規事業というと真っ白なキャンバスに自由に絵を描けるような印象を持つかもしれないが、実際は違う。

新規事業の99%は、自社にとって新規でも、すでに市場に既存の業者が存在している。つまり新規事業の圧倒的多数は、単なる新規参入にほかならない。

新規事業を検討するとき、企業は「そこに市場はあるのか」という市場リスクを真っ先に考える。しかし、新規事業の多くが新規参入であるなら、市場リスクの検討だけでは不十分。むしろ注意すべきは競合リスクだ。

花王がエクセレントカンパニーであることは多くの人が認めるところだが、その花王でさえ化粧品分野への参入は困難を極めた。基礎化粧品に関しては「ソフィーナ」ブランドで成功したものの、競合の強いメーキャップ分野では苦戦が続き、結局はカネボウ化粧品を買収するまで芽が出なかった。いかに新規事業が難しいか、おわかりいただけるだろう。

自社が市場を開拓したとしても油断はできない。みなさんはホームベーカリー(家庭用パン焼き器)を最初に世に送り出したメーカーをご存じだろうか。いまやホームベーカリー市場は年間出荷数43万台(2009年)に成長したが、この市場を切り拓いたのは船井電機だった(1987年)。

ところが、その後、大手メーカーが続々と参入し、船井電機は早々に市場からの撤退を余儀なくされたのだ。市場性が高ければ、他社にとっても魅力的な新規事業になる。たとえブルーオーシャン(競合相手のない領域)を見つけたとしても、その後の競合との戦いに負けてしまえば元も子もないのだ。

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