不確実性を織り込むという意味では、大ヒットではなく中ヒットを狙う戦略も重要だ。大ヒットはしょせん水モノであり、リソースを集中的に投下しても成功する保証がない。

しかし中ヒットなら、数を集めることで、リターンとリスクをある程度コントロールできる。

例えば初速が鈍い商品があれば、プロモーション費用を別の商品につけかえてもいい。実際、業績のいいレコード会社やゲーム会社は、大ヒットがなくても中ヒットを量産することで利益を出している。不確実性の高いところに膨大なエネルギーを使うくらいなら、割り切って切り捨てるという選択もありうる。

一方、不確実性よりも意思決定の選択肢(オプション)に焦点を当てて事業計画を評価する手法が、「リアルオプション」である。

アパレルを例に取ろう。春物商品を企画する場合、従来は前年の夏に企画を固め、その時点で売れるかどうかの評価を下さなくてはいけなかった。

しかし、SPA(製造小売業)として企画から販売まで垂直統合で手掛けるようになると、開発や製造などの段階で、さまざまな情報を加味して数量やデザインを変更することが容易になる。

リアルオプションは、このように途中で選択可能なオプションの価値を定量化し、全体を評価に組み込む手法だと考えてもらえばいい。