基本的に再生産がない「一期一会」

再生産は基本的になし。見かけて欲しくなったらその場でゲットしないと永遠に入手不可能

ガチャガチャのビジネスは「3カ月前受注」「返品なし」というシステムになっており、メーカーは事前に受注できた数量しか生産せず、よほどの大ヒットでなければ、基本的に再生産はしません。販売店も基本的には同じ商品を再び入荷することはありません。つまり、売り切れたら最後で、見つけたときにその場で入手しないと、永遠にゲットすることはできなくなるのです。

人気のある商品の場合、数日で売り切れることも珍しくなく、極端な話、出社中に見かけて欲しくなり、帰社時に買おうと思っても、その間に売り切れてしまうこともあり得ます。商品によって初期ロット数が違うので、見かけたときに買わないと本当に買えなかったりするのです。

「ガチャガチャの森」のような専門店であれば、入手できる確率は高くなりますが、同じことを考える人も多いので、競争率は自ずと高くなります。また、専門店でも立地によって品ぞろえが異なるので、お目当ての商品を即ゲットできるとも限りません。

もちろんネット通販を利用したり、メルカリで出品者から購入したりすることも可能ですが、お目当てのものが欲しいタイミングで適切な価格で入手できるかどうかはわかりません。

したがって、私からのアドバイスは「欲しいものが見つかったら、可能なかぎりその場でゲットしよう」です。

この「その場でゲットしないと、次にいつ入手できるかわからない」という希少性も、宝さがしに通じるものがあり、コレクター心理をくすぐり、ガチャガチャの人気を盛り上げる要因になったと考えます。

ガチャガチャは「モノ消費」ではなく「コト消費」

SNSとの相性の良さ、コト消費を楽しむ

2012年の「コップのフチ子」の大ブレイクが示したように、SNSとの相性の良さも現在のガチャガチャ市場の盛り上がりを支えている要因です。

ユニークな商品を見つけたときの驚き、見事コンプリートしたり、めったに出ないレアアイテムをゲットしたりしたときの喜びをインスタグラムなどに投稿する。あるいはメーカーが異なるキャラクターとミニチュアを組み合わせてジオラマ風にオリジナルの世界観をつくりあげる。友だちから「面白いね」と言われてどんどん拡散されていく。

小野尾勝彦『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)
小野尾勝彦『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)

このように、SNS映えを狙える素材の1つとして、ガチャガチャは手ごろな値段でコミュニケーションを仲介できるツールなのです。いわばガチャガチャはSNSという新しいメディアのネタとして最適だったのです。

従来のガチャガチャの楽しみは「集める」「揃える」「飾る」といった個人で完結するものでしたが、SNSの普及により、新たに「(他人に)見せたい」というニーズが加わりました。

このようなガチャガチャとSNSの関係を反映して、近年増えているガチャガチャ専門店の多くは、店内に撮影ブースや撮影スポットを設け、お客が購入商品を使ってその場で撮影を楽しみ、SNSに投稿できるようにしています。そう、ガチャガチャはモノ消費ではなく、まさにコト消費なのです。

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