これまでのセンチュリーとの大きな違い

そうして出来上がった新型センチュリーですが、フォルムがSUVっぽくなったと同時に大きな変更があります。

今までセンチュリーは例外なく高級車用後輪駆動プラットフォームを使っていましたが、今回は海外向けSUVのグランドハイランダーに使われているFF系のTNGA GA-Kプラットフォームの大容量版を使用。

パワートレインもV8ハイブリッドやV12エンジンなど古典的なマルチシリンダータイプが使われていましたが、新型は既存3.5リッターV6エンジンをメインとしたトヨタ流ハイブリッドを新開発。駆動方式もリアに電動モーターを配したほぼ電動フルタイム4WD。最新のモダンな量産技術がそのまま使われているのです。

3代目センチュリーセダンが信頼性も考え、一世代前のレクサス用FRプラットフォームを改良して使っていたことを考えると時代の変化を感じます。同時に本当にセンチュリークオリティが保てるのかという心配もあります。

ただ面白いのはかつての7層コートの塗装技術やエンブレムなどの職人技術はしっかり移植されていること。そこには変わらぬプライドを覗かせるのです。

センチュリーの象徴である「鳳凰」エンブレムは、工匠が金型を約1カ月半かけて手で彫り込む
画像提供=トヨタ自動車
センチュリーの象徴である「鳳凰」エンブレムは、工匠が金型を約1カ月半かけて手で彫り込む

センチュリーセダンが直面していた2つの危機

しかしこれらの改革もこのシビアな事実を知ると納得できるかもしれません。センチュリーセダンの直近の販売台数です。

2023年 69台(7月まで)
2022年 160台
2021年 65台

既知マスコミから入手したデータですが驚きました。小沢が思っていたより少なかったからです。かつて現行型が出た時に「センチュリーはいたずらに利益は追わない」と言われていたのと同時に「マイナスも許されない」と聞きました。

この販売成績には去年一昨年はコロナの影響もあったはずですが、それにしても月10台以下は少なすぎます。ぶっちゃけ、センチュリーセダンはここ数年存続の危機に立たされていたのでしょう。だからこその新世代センチュリーではないでしょうか。

もう一つの脅威は同じトヨタの大型ミニバン、アルファード&ヴェルファイアです。2001年、初代が生まれた時は高級車の新ジャンルの1つに過ぎませんでしたがあれから20年、今や高級車カテゴリーを席巻しました。

日本の高級セダンは高級ミニバンに置き換わったのです。クラウンはもちろんセンチュリーも例外ではなかったということでしょう。

そんな中、果たしてセンチュリーの延命を図るにはどうすればよいのか。さすがにミニバン化にするわけにもいかず、あるべき姿を模索。

その結果、効率良く作るためにFF系4WDプラットフォーム化し、大容量ミニバンに負けないように背高ノッポにして車内を広くし、大きなリクライニングシートなどを導入した。それが新型センチュリーの姿なのではないのでしょうか。