おかずを一緒に食べたほうが血糖値が下がりやすい

もう一つ、肉にはタンパク質も含まれるが、この分解物にヨーグルト同様の血糖値を下げるインスリンの分泌をよくする働きがある。だから肉と米飯を一緒に食べれば、米飯単独よりも血糖値を上げにくいのだ。

さらに八木氏は米飯と比較して、唐揚げ定食や餃子定食なども比較研究している。

「その結果、餃子や唐揚げをプラスしたり、また酢飯にしたりすると、どれも米飯単体よりも食後の血糖値上昇が抑えられ、糖化は起きにくいという結論に達しました。つまり基本的にはごはんだけを食べるよりも、副菜(おかず)を一緒に食べたほうが血糖値が下がりやすくなるのです。その副菜の内容は、タンパク質、脂質、酸を含むものであればなお良いということ」

世の中で悪いと切り捨てるものを本当にそうなのか? という視点で実験を続けてきた、と八木氏は言う。結論として、メタボになるから悪とされる「牛丼」も「唐揚げ定食」も、食後血糖値の観点からそんなに悪くないということだ。食後血糖値が急上昇すれば、老化や病気の原因となる糖化が進むわけだから、これらのおかずが健康や美容の目の敵ではないともいえる。

「米飯」より「羊羹」のほうが血糖値が上がらない

もう一つ、食欲の秋でもあるので「おやつ」について取り上げたい。

八木氏は「羊羹の摂取が食後血糖値に及ぼす影響」を研究し、2022年に発表している。

健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏
健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏

研究では20歳~30歳の男女を対象とし、A)米飯、B)羊羹(砂糖、小豆、寒天が主原料)、C)砂糖水を比較した。糖質量は50gに揃えて摂取し、その後の血糖値の推移を検証すると、米飯より羊羹のほうが血糖値が上がらなかったのだ。羊羹には砂糖が多量に含まれているイメージがあるので意外である。羊羹の原料である「寒天」には食物繊維が、「小豆」には15種類のフラボノイド(ポリフェノール)が含まれ、抗酸化作用もあるため、これらが良い影響を与えたのではないか、と八木氏は分析する。食べ過ぎなければ血糖値をあげないだけでなく、アンチエイジングの作用もあるという。

「餡って『練る』行為をするでしょう。砂糖を入れて混ぜ続ける。実はこれ、糖化を進めているんです。糖とタンパク質が結びつき、変性した糖化=メイラード反応が起きていて、本来なら老化を進めるものなんです。しかし不思議なことに、これ自体に抗糖化作用があることもわかってきました」

練らなくても、小豆は非常に優秀な一品だ。

「小豆には赤ワインの1.5~2倍ものポリフェノールが含まれ、豆類の中でも抗酸化作用が強いです」と健康検定協会理事長で、管理栄養士の望月理恵子氏が言う。

「その働きは大きく三つあり、血糖値や血圧の上昇を抑え、コレステロール値や中性脂肪値を下げ、便通を促進します。また食物繊維もごぼうの約4倍と多く、腸内環境を整え、老けない体づくりをする食品の一つといえますね。特に日本の小豆(エリモショウズ、しゅまり)は輸入品小豆よりも抗酸化性が高いです。ぜひ国産小豆を原料にして選んでください」