NHKの西館7階には「ジャニーズ専用部屋」

「特に1999年から2000年に週刊文春が喜多川氏による性加害を『セクハラ』などとして取り上げたキャンペーン報道を展開した頃や、04年に、事務所側が起こした名誉毀損きそん訴訟で、記事の重要部分を真実と認定した東京高裁判決が確定した頃を挙げながら、佐々木社長は『私たちはニュースでこの問題を取り上げてこなかった』と指摘。

『私自身長く記者をしてきて、自分自身の当時を振り返っても、人権意識の乏しさや芸能界のニュースに対する向き合い方を思い出すと、本当に恥ずかしいと思っている』と語った」(朝日新聞デジタル9月20日 20:30

恥ずかしいのはTBSだけではない。FLASH(10月10日号)は、NHKの本部がある渋谷の放送センターの西館7階にジャニーズ専用の部屋が用意され、子どもたちとジャニー喜多川が自由に闊歩かっぽしていたと報じている。

さらに、ジャニーズ事務所が所有する渋谷の7階建てのビルを、NHKは数年前から3フロアほど賃貸契約しているという。賃貸料が年間2億円。だが「あまり使われていません」(NHK関係者)。大家であるジャニーズのタレントたちに出演してもらうために契約しているのではないか、という疑惑まであるというのだ。

サンデー毎日(10月8日号)でミュージシャンの近田春夫が「テレビ朝日の敷地に2階建てのプレハブみたいなジャニーズの練習場があったのよ」と話している。

なぜ社会は人権侵害を約70年も放置してきたのか

こうしたメディアとジャニーズ事務所との「馴れ合い」の実態にもメスを入れる必要があることはいうまでもあるまい。

ジャニー喜多川事件はジャニーズ側の問題だけではなく、メディア側の責任も厳しく問われなければいけない。

かつて「王国」とまでいわれた渡辺プロダクションは、ジャニーズと同じように人気タレントたちを大量に抱え、テレビや出版を思いのままに動かしていた。だが、それに反発したテレビマンたちが、テレビ独自にスターの卵たちを発掘する番組をつくり、ナベプロ王国を崩壊させた。なぜ、今回はそうした動きができなかったのだろう。

神里達博千葉大学大学院教授は朝日新聞(9月27日付)でこう問うている。

「この問題の第一義的な責任がジャニー喜多川氏と同事務所にあるのは明白だ。だが、ここで改めて問うべきは、なぜ私たちの社会が、この重大な人権侵害を約70年もの間、事実上、放置してきたのか、である」

私も講談社で長年編集長を務めてきた。私にもこの問題をいち早く追いかけながら、そのまま放置してしまった重大な責任があると思っている。