AIをビジネスに導入するメリットは何か。AI研究者の清水亮さんは「感情的な情報を排除できる点が大きい。財務諸表の作成や人事にAIを介入させることで、経営者が管理職や効率的に意思決定できるようになる」という――。

※本稿は、清水亮『検索から生成へ 生成AIによるパラダイムシフトの行方』(MdN)の一部を再編集したものです。

ヘッドセットとノートブックを使用した3Dレンダリングヒューマノイドロボット
写真=iStock.com/PhonlamaiPhoto
※写真はイメージです

企業の意思決定手段としての生成AI

生成AIは、意思決定のための判断材料を生成することができます。

行動計画を立てたり、経営計画を立てたりすることもできます。

意思決定のためにAIを用いることは、今後どんどん、進んでいくでしょう。なぜなら、そうした方がずっと効率がいいからです。

AIは人間が数週間かかる行動計画の策定をわずか数時間で行うことができます。

経営のようなことをAIがするのは難しいと考えるかもしれませんが、実際の経営というのはもっと直感的に行われています。私は20年間、IT企業を経営してきました。10社の設立に関わり、それぞれの会社の統廃合や、合併、M&Aがあったものの、事業はすべて継続しています。

現場の声だけでは会社の課題は見えてこない

経営判断の現場で、ものをいうのは結局数字です。

会社には、BS(Balance Sheet:貸借対照表)やPL(Profit and Loss statement:損益計算書)といった財務諸表が必ずあり、会社が儲かっているかどうかは、損益計算書を見ればすぐにわかります。

ただし、数値だけ見ていると、「正しい判断が現場で行われているのか」を経営者が判断するのは実は難しいのです。

たとえば、現場の声に耳を傾けると、誰もが例外なく「人手が足りない」「設備が足りない」と言います。

現場は給料を払う立場ではなくもらう立場なので、人手が多ければ多いほど楽ができます。「いまは足りている」と言う人も、「いずれ足りなくなる」と言います。

ということは、現場にいくら現状を聞いてもその会社の本質的なことは見えてきません。