新薬・レケンビと既存薬の違い

今回承認が了承されたレケンビもアデュヘルムと同じくアミロイドβに結合する人工的に製造した抗体を医薬品としたもの。レケンビを投与すると、この抗体が脳内に溜まっているアミロイドβと結合。その結果、抗体を目印に集まってきた一部の免疫細胞などの働きでアミロイドβが分解・除去される。

これに対し、既存の4種類のアルツハイマー病治療薬のうち3種類は神経細胞内を行き来して膨大な情報を伝える役割を果たす神経伝達物質で、記憶に関与すると言われるアセチルコリンが脳内で減少することを防ぐことで効果を発揮する。残り1種類は逆に過剰になることで記憶に悪影響を及ぼす神経伝達物質のグルタミン酸の量を調節する働きがある。ただし、これらの薬は投与開始から1~2年で無効になることが一般的だ。

レケンビは根本療法に近い薬

ここでアルツハイマー病とアミロイドβの関係、それに効果を示す今回のレケンビとアリセプトなどの既存薬との違いについて、神経細胞を屋外の電線に例えて説明する。

屋外の電線は冬の大雪時には、降雪の重みで次第に電線が弱り、最終的に切断してしまうことがある。電線が切断すれば、当然電気は流れなくなるので、周辺は停電となる。

降り積もった雪に耐える電線
写真=iStock.com/katana0007
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この現象をアルツハイマー病に例えると、電線が神経細胞、電線に積もった雪がアミロイドβ、積雪量が多くなると電線が摩耗し、最終的に電線が切断されるまでの過程は、アルツハイマー病が軽度から高度まで徐々に進行する状態となる。

この枠組みで、レケンビとアリセプトの役割を例えると、レケンビは除雪で電線の摩耗・切断を防いで停電を回避するのに対し、アリセプトなどは除雪せず、弱り始めた電線により多くの電気を流す、あるいは過剰な電気を調節しようとするもの。

後者では、積雪(アミロイドβの蓄積)は放置したままなので、いずれ電線(神経細胞)は摩耗・切断(死滅)し、電流を調節する努力(神経伝達物質の減少抑制や調節)が意味をなさなくなる。アリセプトなどが1~2年で効果がなくなるのは、こうした原理だ。

つまりアリセプトなどが対症療法なのに対し、レケンビは根本療法に近い薬と言える。