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東京都知事 石原慎太郎(いしはら・しんたろう)
1932年、兵庫県生まれ。湘南高校卒業後、52年に一橋大学に入学。在学中に『太陽の季節』で芥川賞受賞。68年、参議院選挙で初当選。その後衆議院に転じ、環境庁長官、運輸大臣などを歴任。95年に議員辞職。99年、東京都知事選挙に出馬し当選。


 

日中が対立する尖閣問題だが、今回の騒動の発端はこの人物。4月に都による購入計画を打ち上げた。そうなれば中国は必ず反発する。あわてた政府は国有化に動く。「都が所有すれば漁業施設を建設する。国有化して現状維持する」と中国に説明したが、結果は同じ。反日攻勢が続いている。外務省の幹部は「ボタンを押し間違えれば戦争になる」と危機感を募らせる。

石原氏は対話重視の外務省を「腰ぬけ」と批判する。「自分の国は血を流しても守るべき。通常兵器の戦争なら日本が勝つ。これを知らないからびくびくしている」と豪語する。

衆議院議員に初当選した直後の1973年、国防意識の高揚などを謳ったタカ派集団「青嵐会」を立ち上げた。その頃、尖閣周辺の海底油田が注目されて領有権問題が浮上し、78年、青嵐会は魚釣島に灯台を建設。さらに「核武装せよ」「徴兵制復活」と物議を醸すが人気は衰えない。99年から都知事4期連続当選を果たす。沈黙が美徳となってしまった日本社会で、歯に衣着せぬ発言は、やるせない不満の発露としても一定の支持を得ている。

そして、今、尖閣問題を機にタカ派が主流になりつつある。今回の自民党総裁選でも、「国防軍創設」「防衛予算増強」などが叫ばれた。大手メディアからの批判もない。しかし、結局、血を流すのは国民だ。どれだけの人に「血を流す覚悟」があるか。「命をかけて守るものがある」と訴えたタカ派の元総理大臣でさえ、お腹が痛くてその座を放り出したではないか。

タカ派が戦争を扇動し、国民がそれを支持する空気を「いつか来た道」と危惧する政治家も少なくない。石原氏は中国に対し「寄らば斬るぞ」と強気だが、ある政治家はつぶやいた。「血を流さない覚悟こそ重要だ」と。