「ケーブルだらけの毎日」に「お前が言うな」の声

この際、世界中のガジェット愛好家を失笑させたのが、新モデル『iPhone 15』のUSB-C採用に関するセールスコピーだ。

「みんなうれしいUSB-C」「これで、ケーブルだらけの毎日とはお別れです」。従来も既存技術をまるで独自の発明かのように喧伝してきた、いかにもアップルらしい言葉選びとも言えるが、さすがにこれには筆者のようなアップルファンも唖然としてしまった。

そもそもLightningにこだわり、iPhoneのためだけに充電ケーブルを用意しなければならなくしていたのは誰なのか? しかもLightningケーブルにはMFi認証のライセンス料が上乗せされるから、同等のUSB-Cと比べて割高だ。また、この方針転換によって、これまで使っていたLightning接続のイヤホンや周辺機器を使い続けるには4780円もする変換アダプタを購入せねばならないことも腹立たしい(なお、接続するものが純正イヤホン『EarPods』だけなら、そちらを買い換えた方が2000円安い)。そんな積年の不満が爆発したのか、日本のSNSでは「おまいう(おまえが言うな)」など、散々な言われようとなってしまった。

なお、USB-C移行に際し、一部で指摘されていた、アップルがUSB-C環境下でもMFi認証を用いたライセンスビジネスを継続し、高価な公式ケーブルでしか高速な通信や充電を利用できなくなるのではないかという懸念は杞憂きゆうに終わった。アップルはやるつもりだったと言われていたが、先んじてEUが「そうした機能制限は認めない」と通達したことで、無事、iPhoneでは全てのケーブルが同等に性能を発揮できることに。これはEUの超ファインプレーと言えるだろう。

USB-Cの恩恵を受けるには多くの注意が必要

さて、こうした背景でいよいよ導入されたUSB-Cだが、それによって具体的にはどのようなメリットあるいはデメリットが生まれるのだろうか?

まず、アップルが言うように「ケーブルだらけの毎日とお別れ」できる効果はありそうだ。特にiPhone以外、身の回りのガジェットを全てUSB-C対応のものでそろえている人は、ケーブル1本で全ての周辺機器を充電・接続できるようになる。これは出張などでノートPC、タブレット、カメラ、ワイヤレスイヤホンなどを持ち歩く人には大きなメリットと言える。

もっとも、Lightning対応機器はiPhone以外にも多数存在するため、それらを使っている人には「一本化」のメリットはまだない。アップルは新型iPhoneと合わせて、ワイヤレスイヤホン『AirPods Pro』をUSB-C対応としたが、一部のiPadやMac向けのキーボードやマウスなどはLightningのまま。アップル製品のUSB-C全面移行にはもう少しかかりそうだし、買い換えられるのはもっと先になるだろう。